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Fusee (horology) - Wikipedia (フュージー (時計学))

フュージーとはゼンマイ式の時計に使用された装置で、ゼンマイの駆動力を一定にするためのもので、 仕組みとしては非常に面白い装置です。 振り子時計にはこれは必要でなくなり、懐中時計のみに使用され続けます。 しかしこれも徐々に使用されなくなり、そのうち姿を消しますが、海洋クロノメーターには使用され続けていました。 この使用も 1970 年頃には姿を消すことになります。

主バネのバレルとフュージー	ストックフォルムの Johan Lindquist による 1760 年制作の懐中時計内部のフュージー

フュージーの起源は知られていない。 多くの情報源は間違えてプラハの時計製造家の Jacob Zech が、 1525 年頃に発明したとされている。 最も初期のはっきりと日付がわかる時計は 1525 年に Zech により製造されているが、 フュージーは実際、 最初のバネ動力の時計と共に、それ以前の 15 世紀に登場している。 アイデアは恐らく時計製造家が起源でない。というのは最も初期の既知の実例は、 クロスボウ (crossbow) の巻き上げ機 (windlass) で、 1405年の軍事写本に示されている。 フィリッポ・ブルネレスキ (Filippo Brunelleschi) と レオナルド・ダ・ヴィンチ (Leonardo da Vinci) による 15 世紀の絵にフュージーが描かれている。 フュージーが付属する最も初期の既存の時計は、最も初期のバネ動力 (spring powered) の時計 ―― ブルゴーニュ時計 (Burgunderuhr) ―― でもあり、 この図 (iconography) が示唆することは、 これは部屋時計 (chamber clock) で、 ブルゴーニュ侯爵 (Duke of Burgundhy) の 善良公フィリップ (Philip the Good) のために製造され、 ゲルマン国立博物館 (Germanisches Nationalmuseum) に保存されている。 単語の fusee (フュージー) はフランス語の fusée と後期ラテン語の fusata ―― 軸一杯に巻き上げた紐 (spindle full of thread) ―― に由来する。

1490 年頃、レオナルド・ダ・ヴィンチによって描かれた フュージーを組み込んだ機械の絵

バネは 15 世紀に時計の動力として始めて採用され、時計を小さく持ち運べるようにした。 この初期のバネ駆動の時計は重りで駆動する時計よりも随分と不正確であった。 紐につるした重りは、 時計の歯車回転に一定の力を与えるが、これとは違い、 バネが与える力は、バネが巻き戻されると減少する。 原始的なバージとフォリオットの計時機構は、 すべての初期の時計で使用され、駆動力に鋭敏であった。 従って、初期のバネ駆動の時計は、主バネが巻き戻されると、速度が低下し、 不正確な計時の原因となった。 この問題は等時性の欠如と呼ばれた。

主バネにより提供されるトルクは、 時計の 動作中のバネの巻き戻しで、 線形的に減少する。	スタックフィード (stackfreed) の付いた 1500 年代の懐中時計、 これは減少する主バネのテンションに対する 解決方法。フュージーよりも以前。 スタックフィード (stackfreed) は頂上の近く。

この問題に対する 2 つの解決が、最初のバネ駆動の時計で登場した; スタックフィード (stackfeed) とフュージー (fusee) である。 スタックフィード (stackfeed) は粗削りなカムの補正機 (compensator) で、 多くの摩擦を付け加え、1 世紀を経ない間に見捨てられた。 フュージー (fusee) はもっと長く続くアイデアであった。 機構部 (movement) が走ると、フュージーのプーリー (pulley) の先細の形が 主スプリングからの牽引 (pull) の機械的利点を連続的に変更し、 減少するバネの力を補正した。 時計製造家はフュージーの正しい形を明らかに経験的に発見した。 これは単純な円錐ではなく、双曲面である。 最初のフュージーは長く、ほっそりしていたが、後の物は、しゃがんでコンパクトな 形であった。 フュージーは主バネからの一定の力を得るための標準的な方法となり、 大半のバネ巻き時計で使用され、17 世紀に懐中時計で使用された。

最初は、フュージーの紐は ガット (gut、腸) を使用し、時にはワイヤーで製造した。 1650 年頃に鎖が使用され始め、これは長く続いた。 「ジュネーブのグリュエ」 (Gruet of Geneva) は 1664 年にこれを導入したと広く認められているが、 フュージー鎖の最初の言及は 1540 年頃である。 紐使用にデザインされたフュージーは溝 (groove) で区別がつき、 これは断面が円形で、 一方、鎖使用にデザインされたものは断面が長方形である。

1726 年頃にジョン・ハリソンは、フュージーに動力維持バネ (maintaining power spring) を 追加して、クロノメーターを巻き上げ中にも走らせ続け、 これは一般に採用された。

フュージーと主バネの円筒、操作を示す。 (A) 主バネの軸, (B) 円筒, (C) 鎖, (D) フュージーへの鎖の接続, (E) 円筒への鎖の接続, (F) フュージー (G) 巻き上げ軸, (W) 出力歯車

主バネは円柱状容器 (円筒) の中で、固定された軸のまわりにぐるぐる巻きにされる。 バネの力は円筒を回転する。 フュージー時計の中で円筒は鎖を引いて、フュージーを回転し、 フュージーは時計の歯車を回転する。

1. 主バネが巻き上げられた時 (図 1)、 すべての鎖はフュージーのまわりに底部から頂上まで巻き上げられ、 その末端がフュージーの狭い頂上から円筒に向かう。 従って、(フュージーの頂上では) 巻き上げられた主バネの強い引きがフュージーの小さな末端に 作用し、フュージーにかかるトルクはフュージーの半径を持つ小さいテコの腕により減少する。
2. 時計が進むと、鎖はフュージーの上部から底部まで巻き戻され、 円筒に巻き付く。
3. 主バネが巻き戻されて (図 2)、より多くの鎖が円筒に巻き付き、円筒に向かう鎖はフュージーの 広い底部の溝から離れる。 次に主バネの弱体化した引きはフュージー底部の大きな半径に作用する。 (フュージー底部では) フュージーの大きな半径により、大きな回転モーメントがバネの弱い力を補償して、駆動トルクを一定に保つ。
4. 時計を再度、巻き上げるために、鍵をフュージーの四角い軸 (巻き上げ軸) に装着して、フュージーを回転する。 フュージーの引きは円筒から鎖を巻き戻して、フュージーに復帰させ、 円筒を回転して主バネを巻く。 フュージーの存在により、主バネを巻き上げるのに必要な力は一定のままで、 主バネが硬くなっても増大しない。

フュージーの歯車は、機械装置の歯車列を駆動し、通常は中央歯車を駆動する。 フュージーと歯車の間には ラチェット (rachet, フュージーの内部にあって見えない) があり、 これは巻き上げ中にフュージーが時計の歯車列を逆回転させることを防止している。 高品質時計と後の多くのフュージー機構には動力維持バネ (maintaining power spring) があり、 一時的動力を提供して、巻き上げ時に機械を動かし続けた。 この形式は 継続フュージー (going fusee) と呼ばれる。 通常はフュージー円錐を基礎にする惑星歯車メカニズム (周転円ギア (epicyclic gearing)) で、 巻き上げ方向に逆向きの回転力を提供し、 従って、巻き上げ中に懐中時計や時計を継続して動かす。

大半のフュージー時計と懐中時計には「巻き上げ停止」 ('winding stop') のメカニズムが含まれ、 主バネとフュージーを巻き上げすぎて、鎖を壊す恐れを防いでいる。 巻き上げると、フュージー鎖はフュージーの頂上に向けて上昇する。 これが頂上に達すると、レバーが押されて、フュージーの縁から突き出る突起 (projection) の 通り道に金属の歯を移動する。 フュージーが回転すると、突起が歯に食い込み、更に巻き上げることを防止する。

通常のフュージーは一方方向に巻き上げることができるのみである。 「酔っ払い」フュージー ("Drunken" fusee) が開発されたが、ほとんど使用されなかった。 これはフュージーをどちらの方向にも巻き上げることができる。 ジョン・アーノルド (John Arnold) は少々の海洋クロノメーターにこれを使用したが成功しなかった。

フュージーは良好な補償装置であるが、 これは、高価で、調整することが困難、そして他の不利な点もある :

• かさばり、背が高く、そして懐中時計を時代遅れなくらいに分厚くする。
• もしも主バネが壊れて、交換する必要があれば ―― これは初期の主バネでよくあったこと ――、 フュージーは新バネに対して再調整する必要があった。
• もしもフュージー鎖が壊れれば、主バネの力により時計内部で末端がむち打ち、被害が起きる。

時計の裏ブタをはずした。フュージーが見える。

等時性の達成はバネ駆動による時計の 500 年の歴史を通して、 重大な問題として理解された。 等時性を増大するために多くの部分が次第に改良された。 そして終にフュージーは大半の計時装置で不必要になった。

17 世紀中頃の振り子とバランス・スプリング (balance spring, テンプに登場するバネ) の発明は、 計時要素を調和振動子にすることにより、 自然なチクタク音が変化に抵抗性を持ち、時計と懐中時計の等時性を増やすことになった。 アンカー・エスケープメントを持つ振り子時計は 1670 年に発明され、 駆動力から十分に独立したため、ほんの少しがフュージーを持っていただけである。

懐中時計では、バージ・エスケープメントはフュージーを必要としたが、 次第に主バネの力の変動にそれほど鋭敏でないもの ―― シリンダー・エスケープメント (cylinder escapement)、後にはレバー・エスケープメント (lever escapement) ―― で交代された。 1760 年にジャン - アントワーヌ・レピーヌ (Jean-Antoine Lépine) はフュージーをなしで済ませ、 継続円筒 (going barrel) を発明し、懐中時計歯車列に直接動力を与えた。 これには、とても長い主バネが含まれ、この中のほんの数巻きが時計の動力に使用された。 その結果、主バネの「トルク曲線」 ('torque curve') のほんの一部分が使用され、ここでは トルクが近似的に一定であった。 1780 年代に、より薄い時計を追求して、フランスの時計製造家はシリンダー・エスケープメント (cylinder escapement) と 継続円筒 (going barrel) を採用した。 1850 年までに、スイスと米国の時計製造産業は継続円筒 (going barrel) をもっぱら採用し、 等時性を持つようにバランス・スプリング (balance spring) を調節する新方法を援用した。 イングランドはよりかさばる完全プレート・フュージー (full plate fusee) 時計を 1900 年頃まで製造し続けた。 これは廉価なモデルで低所得者層に売却され、あざけって「かぶ」 ("turnips") と呼ばれた。 この後、フュージー (fusee) の残存する唯一の使用は海洋クロノメーターとなり、これには最高精度が必要で、 かさは不利な点ではなかったが 1970 年代に終に時代遅れになった。