ボグ (Bog)

ボグは泥炭 (peat) が累積する湿地帯で、泥炭は枯れた植物質 (dead plant material) -- 大半はコケ (mossse) で、大多数はミズゴケ (sphagnum) -- である。これは湿地帯の主な型式の一つである。ボグの他の名称に含まれるものは：マイヤ (泥沼, mire)、クァグマイヤ (沼地、quagmire)、及び、マスケグ (湿地、muskeg)；アルカリ性マイヤ (mire) はフェンと呼ばれる。これらは、しばしばつつじの灌木 (ericaceous shrub) で覆われ、ミズゴケと泥炭に根差している。枯れた植物質が次第に累積するため、ボグにはカーボン・シンク (Carbon sink、二酸化炭素の流し) としての機能がある。

ボグが起きるのは地下水の表面 (water at the ground surface) が酸性で、栄養価が低い時である。ある場合には水は全て雨から得られ、この場合には降水栄養性 (ombrotrophic (rain-fed)) と呼ばれる。ボグから流れ出る水は特徴のある茶色で、溶融した泥炭のタンニン (tannin) に由来している。一般的に肥沃ではなく、涼しい気候により、植物の生育が比較的遅く、腐敗は更にもっと遅く、これは飽和土壌 (saturated soil) の理由からである。従って、泥炭が累積する。広い領域が何メートルもの深さの泥炭で覆われていることがあり得る。

ボグ (Bogs) は動物、菌類、植物種の特色ある集まり (assemblage) であり、生物多様性 (biodiversity) にとり、高度に重要で、 (もしボグがなければ) 人々の定住があり、農地となっている光景ではとりわけのことである。

ボグは冷たい温暖地域 (cold, temparate, clime) に広範囲に分布し、大半が北半球の亜寒帯生態系 (borreal ecosystem) にある。世界最大の湿地はロシアの「西シベリア低地帯」 (Western Siberian Lowlands) の泥炭ボブ (peat bog) で、これは 100 万平方キロメートル以上にわたっている。大きな泥炭ボグは北米にも出現し、とりわけハドソン川低地帯とマッケンジー川ベイシン (Machenzie rive Basis) に出現している。これらは南半球ではそれほど一般的ではなく、最大のものはマジェラン荒地 (Magellanic moorland) で、 44,000 平方キロメートルあたりから構成されている。ミズゴケ・ボグ (Spahagnum bogs) は北ヨーロッパに広範囲にあったが、しばしば農業のために、取り除かれたり、乾燥させされたりした。

2014 年に、コンゴ共和国のイタンガ村 (Itanga village) を出発した探検隊はイングランドほど大きな泥炭ボグを発見し、これは隣接するコンゴ民主共和国 (Democratic Republic of Congo) まで続いている。

ボグに生息するのは多くの高度に専門化した動物、菌類 (fungi)、植物がある。大半が、低栄養レベルと浸水を許容できる。ミズゴケ (sphanum) は一般的に豊富で、ツツジの灌木とともにある。灌木はしばしば常緑樹で、これは栄養の保存を助けていると理解されている。常緑樹が起きる場所はボグが周辺の亜寒帯 (boreal) の常緑林の広がりに取り込まれるところにある。食虫植物のモウセンゴケ (sundews、モウセンゴケ属 (Dryser)) とピッチャー・プラント (pitcher plants) (例えばムラサキヘイシソウ (Sarracenia purpurea)) は低栄養状態に適応して、無脊椎動物を栄養源にしている。ラン (orchids) はこの状態に適応し、菌根菌 (mycorrhizal fungi) を使用して栄養を摘出している。幾つかの灌木-- 例えばヤチヤナギ (Myrica gale) (bog myrtle) -- には根粒があり、ここで窒素固定 (nitrogen fixation) が起き、これによりチッソの別の補足的な資源が手に入る。

ボグ (Bogs) は幾つかの政府当局と保護局にとり、重要で特別な生息域の型式として認められている。これらが提供する哺乳類の生息域は：トナカイ (caribou)。ヘラジカ (moose)、そしてビーバー (beaver)、ひいては巣作りをする岸辺の鳥 (shorebird) の種類が含まれるのは言うまでもなく、これにはソデグロヅル (Siberian crane) とオオキアシシギ (yelllowlegs) が含まれる。英国はその「生物多様性アクション・プラン」 (Biodiversity Action Plan) において、ボグ生息域を保存の優先事項に設定している。ロシアは西シベリア低地帯 (West Siberian Lowland) に大きな保存システム (reserve system) がある。最高の保護状態は Zapovedniks (IUCN カテゴリー IV) にある； Gydansky と Yugansky は 2 つの顕著な実例である。ボグには特徴的な昆虫さえある；イングランドのボグは hairy canary fly (Phaonia jaroschewskii) と呼ばれる黄色いハエの住処だし、米国のボグはボグ・コッパー (bog copper, Lycaena epixanthe) と呼ばれる蝶の住処である。アイルランドでは、コモチカナヘビ (viviparous lizard) -- この国で唯一の爬虫類 -- がボグに住んでいる。

ボグ生息域は色々な状況で進展があり得、気候と地域に依存する ( 湿性系列(hydrosere succession) を参照の事)。

ボグの 1 つの分類方法は地形における位置と水源に基づくことである。

峡谷ボグ (valley bog)

これらは穏やかに傾斜する谷、あるいは小峡谷で発展する。泥炭の層が谷の最深部を埋め、水の流れはボグの表面を通っているかもしてない。流域ボグは比較的乾燥して、温かい気候で進展するかもしれない、これらは地下水 (ground water)、あるいは地表水 (surface water) に依存するのみで、酸性状態のみが起きる。

上昇ボグ (raised bog)

これらは湖あるいは平坦な湿地帯で非酸性あるいは酸性の環境で発展する。何世紀もの間に、開放された湖が発展して、湿地帯 (marsh)、次にフェン (あるいは酸性環境の下で、峡谷ボグ) およびカーとなり、泥や泥炭が湖を埋める。まもなく泥炭はある層まで積み上がり、ここで地表面はとても平坦となるため、地下水あるいは地表水は湿地の中心に到達できなくなる。この部分は従って、完全に降水栄養性 (rain-fed, ombrotrophic) となり、その結果起きる酸性環境により、 (よしんば環境が非酸性であるにせよ) ボグの発展が可能となる。ボグは泥炭を生成し続け、しばらくして、浅いドーム型の泥炭 -- 上昇ボグ -- が生成される。このドームは典型的には中央部が数メートル高く、しばしば、川の端、あるいはこれに沿ったフェンの一帯、あるいは湿地帯の植生でしばしば取り囲まれ、ここで地下水が湿地帯に滲み出すことができる。

上昇ボグの色々な型式は次のように分類することができる：

ブランケット・ボグ (blanket bog)

冷たい天候で年中雨が降れば (1 年 235 日程度以上であれば)、地表は始終水浸しのまゝであり、泥炭の植生の進展条件が提供される。このような条件では、ボグは土地の大半で -- 丘の頂上、斜面で -- 一枚のブランケット (毛布) の層として生成される。ブランケット・ボグはある種の条件では酸性状態の時にもっと一般的であるが、豊富な酸性雨が地下水を勝ることがあれば、中性状態、あるいはアルカリ状態でもブランケット・ボグが発展する可能性がある。ブランケット・ボグは、より乾燥したり、より暖かい気候では起きない。というのは、このような条件では丘の頂上や斜面はしばしば非常に早く乾燥するので泥炭が形成されない。 -- 中間的な気候では、ブランケット・ボグは直射日光を受けない場所に限定されるかもしれない。氷河期周辺の天候 (periglacial climate) では、ブランケット・ボグの定式化された形成 (patterned form) があり得、これはストリング・ボグ (string bog) と呼ばれている。ヨーロッパでは、これらの大半は著しい表面構造のない非常に薄い泥炭の層であり、アイルランド、スコットランド、イングランド、そしてノルウェイの丘と谷に分布している。北米では、ブランケット・ボグは圧倒的にハドソン川東に登場している。これらのボグは今なおミネラル・土壌水 (mineral soil water, 地下水) の影響下にある。ブランケット・ボグは北半球の 65度緯線の北では起きない。

クウェイキング・ボグ (quaking bog)

クウェイキング・ボグ (quaking bog, 振動ボグ) は峡谷ボグ (valley bogs)、上昇ボグ (raised bogs) の、より湿った部分で起き、時々酸性湖の端の周りで起きる、ボグの植生は大半がミズゴケ (sphagnum moss) がカヤツリグサ科の草 (sedge, 例えば carex losiocarpa) により固定された浮かぶマットで、およそ半メートルほどの厚さがあり、水際、もしくはとても湿った泥炭の頂上にある。カナダトウヒ (white spruce) もこのボグの世界で一般的である。この上を歩くと、これが動く原因になる -- 大きな動きは表面の目で見える波を起こし、あるいは木が揺れる。波が邪魔しなければ、ボグはそのうち湾全体を覆ったり、小さな湖全体を覆う。湖の端のボグは引き離されて、島となることもある。

カタラクト・ボグ (cataract bog)

カタラクト・ボグ (滝ボグ、cataract bog) は珍しいエコロジー的な共同体で、永久に流れる水が花崗岩の露頭の上を流れる時に形成される。水の覆いにより、岩の端は浸食されることなく、湿っているが、この危なっかしい場所では、どの木も、どの大きな灌木も足場を維持できない。その結果、狭い永久に湿った生息域になる。

富栄養ボグ (euctrophic bog)

富栄養ボグはミネラル性栄養ボグ (minerotophic bog) とも呼ばれ、フェンの泥炭のトップにある。この結果、水は栄養素が豊富である。これらは温暖な地域に見受けられる。フェンはこの種のボグの実例である。

中栄養ボグ (mesotrophic bog)

中栄養ボグは過渡的泥炭ボグ (transitional peat bog) とも呼ばれ、少々の栄養を含んでいる。

貧栄養ボグ (oligotrophic bog)

貧栄養ボグは、地下水に栄養が貧弱な時 -- 栄養が貧弱な湿地 -- に起きる。これらは幾つかの変種がある：上昇ボグ、soligenic ボグ、ブランケット・ボグでおきる。

Great Kemeri ボグ・ボードウォークはラトビア、 Ķemeri 国立公園の観光客の呼び物で、観光客にボグとその生き物を探検させている。短いボードウォーク (14 km, 0.88 マイル) と長いボードウォーク (3.4 km, 2.1 マイル) があり、展望台があって、日の出と日の入りの撮影をするのに人気がある。

泥炭は乾燥されてから燃料として使用され、これは何世紀もの間使用されてきた。アイルランドの家庭暖房の 20% 以上は泥炭に由来し、泥炭はフィンランド、スコットランド、ドイツ、及びロシアでも使用されている。ロシアは燃料用の泥炭の主要な輸出国で、 1 年に 9000万トンを輸出している。アイルランドの Bord na Móna (泥炭委員会) は泥炭の取入れを最初に機械化した企業の 1 つであったが、これが時代遅れのものとなりかかっている。

乾燥泥炭の主な使用は土壌改良剤 (「コケ泥炭」 (moss peat) あるいは「ミズゴケ泥炭」 (sphagnum peat) として販売) で、土壌の湿度保全能力を増大し、土壌を豊かにする。これは敷き藁 (mulch) としても使用されている。ある蒸留酒製造業者 -- とりわけ、アイラ島 (Islay) のウィスキー製造地区の業者 -- はスコッチ・ウィスキーを製造する時に、大麦を乾燥させるために、泥炭の燃焼による煙を使用する。

泥炭が一旦、抽出されると湿地を復元するとは困難である。というのは泥炭の蓄積はゆっくりとした行程だからである。イングランドのボグの 90% 以上が被害をこうむったり、破壊されたりした。 2011 年に、園芸製品から泥炭を消し去る計画が英国政府により表明された。

ボグの泥炭は炭素が貯蔵される重要な場所の一つである。もしも泥炭が腐敗すれば、二酸化炭素は大気中に放出され、地球温暖化に貢献する。邪魔されなければ、ボグはカーボン・シンク (carbon sink, 炭素の流し) として機能する。一つの実例では、かってのソビエト連邦の泥炭地帯は大気から、 1 年に 52 Tg の炭素を取り除いていると計算された。

泥炭ボグは真水を保存する上で重要で、とりわけ大河川の水源でこうである。巨大な長江 (Yangtze River) でさえ、チベットの源流の近くの Ruoergai 泥炭地区から生まれている。

訳注

ボグ・ウッド (bog wood) は英文のウィキペディアからリンクをたどると埋もれ木に達するが、英文の方はボグで普通に生成される木の意味になり、少しニュアンスがずれる。

ミズゴケ・ボグは野外リクリエーションに使用され、これにはエコツーリズム (ecotourism) と狩猟が含まれる。例えば、多くの人気がある北カナダのカヌーのルートは泥炭地区を含んでいる。これ以外の活動、例えば全地形対応車 (all-terrain vehicle) の使用はとりわけボグに被害を与える。

ボグの中の無酸素環境 (anaerobic environment) とタンニン酸 (tannic acid) の存在から、有機物が見事に保存される。このような資材の発見はデンマーク、アイルランド、ロシア、そして英国でなされた。あるボグは古代のオークの丸太のような埋もれ木を保存し、年輪年代学 (dendrochronology) で有益で、あるボグには極端に良く保存された遺体があり、髪の毛、内臓、皮膚が無傷で、明らかにゲルマン人あるいはケルト人の生贄によって何千年もの間埋葬されていた。そのような人間の標本の素晴らしい実例はデンマークのハラルドスカー・ウーマン (Haraldskaer woman)、トーロンマン (Tollund Man)、そしてイングランドのリンドウ・コモン (Lindow Common) で見つけられたリンドウ・マン (Lindow Man) である。アイルランドのメイヨー州 (County Mayo) のケイジ・フィールズ (Céide Fields) では 5000 年を経過した新石器時代の農業地勢 (farming landscape) がブランケット・ボグの下で保存されているのが見つかり、畑の壁と小屋が完全に備わっていた。多くの場所のボグで見つかる 1 つの古代の人工物はボグのバターで、大きな脂肪の塊が通常木造の入れ物に入っている。バターと獣脂の両方を保存する食糧倉庫があったと思われている。


Mer Bluee Bog, カナダ、オンタリオ州の典型的な泥炭ボグ	沈殿が多くのボグで累積し、エストニアの Koitjärve ボグのようなボグのプールを形成


エストニア、Niitraljia ボグヨーロッパアカマツ	北米東岸のムラサキヘイシソウのような食虫植物はボグではしばしばみられる。昆虫獲得で窒素とリンが得られこのような条件では稀なものである。


ミズゴケとカヤツリグサは、小さな湖の岸辺に浮きボグを作ることがある。オレゴン、ダック湖 (Duck) のボグは食虫植物のモウセンゴケ (sundew) の住処	コネマラのブランケット・ボグ、アイルランド、


オハイオ州ブラウンズ湖ボグのミズゴケとムラサキヘイシソウ (northern pitcher plants)	オストフリースラント (Ostfriesland) のボグ


スコットランド、エアシア (Ayrshire) 南 Auchenmade の近くの Stumpy Knowe のボグ・ウッドと石	ボグが 10 月朝の霧と共に見える、エストニア、Mukri