ミシシッピ川ガルフ・アウトレット運河 (Mississippi River-Gulf Outlet Canal)

ミシシッピ川ガルフ・アウトレット運河 (Mississippi River-Gulf Outlet Canal、 MRGO あるいは MR-GO と短縮) は 76 マイル (122 km) の水路で、米国陸軍工兵隊 (United States Army Corps of Engineers) が国会の指示の下で 20 世紀中頃に建設し、メキシコ湾とニュー・オーリンズ・インナー・ハーバー産業運河の間に沿岸内水路 (intracoastal Waterway) を経由した短いルートを提供した。 2005 年に MRGO はハリケーン・カトリーナの高潮 (storm surge) を広域ニュー・オーリンズ (Greater New Orleans) の中心部に導き、これに続く複数の技術的崩壊 -- 地域のハリケーン防護網に発生 -- に多大に寄与した。その後、水路は閉鎖された。恒久的な高潮バリアー (storm surge barrier) が 2009 年に MRGO に建設され、水路は海洋輸送に閉鎖された。

MRGO はニュー・オーリンズ・イースト (New Orleans East) での、メキシコ湾沿岸内水路 (Gulf Intracoastal Waterway) との (州間道路) I-510 横断点のすぐ西 (訳注：東の間違い) で始まる。ボーン湖 (Lake Borgne) のすぐ西で、セント・バーナード教区 (St. Bernard Parish) の湿地を通り抜け、ガードナー島 (Gardner Island) の近くのメキシコ湾に南南西の道をたどる。環境に悪影響があるとして、随分批判され -- 例えば塩水の侵入、湿地の浸食、ハリケーン・カトリーナの最中の高潮の増幅 --、 MRGO は 2009 年に閉鎖され、海洋交通は 2009 年 4 月 22 日に禁止された。

水運にメキシコ湾への短いルートを提供するものとして、 MRGO は概念的に 20 世紀始めに思い描かれた。ニュー・オーリンズ港はますます不利になると感じたのは：洋上船がメキシコ湾から港の波止場までミシシッピ川の曲がりくねりを航行するのに必要な時間の長さに対し、新興の競争相手に提供される開放水域へのはるかに密接した近さにあった。とりわけ、現代のヒューストン港 (Port of Houston) は 1914 年のヒューストン船舶運河 (Houston Ship Canal) の完成の結果として存在することになった。ニュー・オーリンズの初期の反応は、ミシシッピ川とポンチャートレーン湖 (Lake Pontchartrain) を接続する産業運河の落成で 1923 年にデビューし、従って、ロウアー・ナインス・ウォード (Lower 9th Ward、下 9 番区) とニュー・オーリンズ・イースト (New Orleans East) を創設した。

1943 年に提案されたプロジェクトはニュー・オーリンズのドック委員会 (Dock Board) により、アレグザンダー海路 (Alexander Seaway) の名称の下に、米国陸軍工兵隊 (US Army Corps of Engineers) に提出された。アレグザンダー (Alexander) とはドック委員会 (Dock Board) のメンバーであるレスター F. アレグザンダー大佐 (Col. Lester F. Alexander) を言及し、彼はニュー・オーリンズの計画の背後にいる企画者 (architect) の 1 人であった。競合する計画がジェファーソン教区 (Jefferson Parish) によっても提出され、これは「アメリカの矢」 ("Arrows of America") と言及され、ジェファーソン海路 (Jefferson Seaway) とも呼ばれた。

数十年間に船舶の平均の大きさが急速に増大し、産業運河をミシシッピ川につなぐ運河水門が時代遅れになった； 1950 年代に促進された MRGO は、喫水の深い船舶が産業運河のインナー・ハーバー (内部港) にアクセスすることを可能にして、この欠陥を修正する助けをすることになった。 MRGO の認可は正式に、「1956 年の河川・港法」 (Rivers and Harbors Act) で、米国国会により提供された。建設は 1968 年に完成した。

周辺の湿地が急速に侵食されて、運河は 2005 年に元々建設されたよりも、すでに 4 倍も広くなった。 2005 年までに、水路は場所によっては 3000 フィートまで広がり、毎年浚渫された。

1965 年に MRGO の完成で、ニュー・オーリンズ港 (Port of New Orleans) は計画を推進して、ミシシッピ川沿いの波止場を大体見捨てて、産業運河、沿岸内水路 (Intracoastal Waterway)、そして MRGO により創設されたインナー・ハーバー (inner harbor、内部港) に活動を移すことになった。この広大なプロジェクトはセントロポート USA (Centroport USA) と呼ばれ、十分な予算を獲得することがなく、 1980 年代中頃にニュー・オーリンズ港によって静かに放棄された。フランス・ロード・コンテナー・ターミナル (France Road Container Terminal) とジョーダン・ロード波止場 (Jourdan Road Wharf) はセントロポート (Centroport) の計画で実現されたたった 2 つの要素であった。

セントロポート・プロジェクト (Centroport project) を見捨てた後で、ニュー・オーリンズ港 (Port of New Orleans) はミシシッピ川沿いのインフラの改善努力に再度焦点をあわせ、MRGO が務めるわずかな交通が縮小し、衰退した批評に道を開くことになった。

1997 年に「競争的事業インスティチュート」 (Competitive Enterprise Institute) -- 自由企業と制限された政府の原理 ("principle of free enterprise and limited government") に専念するリバテリアン (libertarian、自由意志論者) の組織 -- は経済上の理由から攻撃した。

貧困に打ちひしがれたセント・バーナード教区 (St. Bernard Parish) の 76 マイルの水路沿いの約束された経済発展はまだ実現されていない。 MRGO がもたらしたのは、商用とリクリエーション用の水上交通のための、年間 $800万少々の保守計画である。水路を使用する 1 日 2 隻以内の大きなコンテナー船のための $10億近くの価格は困惑させるもので、とりわけ、水路が元々の水路をたった 37 マイル少なくしただけであることを考えるとなおさらである。

ハリケーン・カトリーナの前に、環境主義者 (environmentalist) とその他の人達、とりわけセント・バーナード教区 (St. Bernard Parish) の投票者 -- これは運河が助けようとした人達 -- を含め、運河を閉鎖することを呼び求めた。

ハリケーンの後で、批判が増大し、この時技術者は MRGO を広域ニュー・オーリンズの大きな部分を保護する堤防と洪水壁 (flood-wall) の崩壊に関係づけた。 MRGO は高潮 (storm surges) の影響を増大した役目によって、カトリーナの通った "ハリケーン・ハイウェイ" (Hurricane Highway) とあざけって呼ばれた。

『環境防衛資金』 (Environmental Defense Fund) のスコット・フェイバー (Scott Faber) により、 2005 年末になされた国会聴聞会の発言によれば、『MR-GO の交通は 1986 年以来、50% 以上も下落した。今日、平均して 1 日 1 隻以内の洋上船がこの人造のショート・カットを使用し、しかも平均して 1 年に $1300万の維持費がかかる。工兵隊により建設された多くの水路と同様に、MR-GO はプロジェクトが完成された時に工兵隊が予測したのと同程度の交通を引き付けることに失敗した。』

MRGO と沿岸内水路 (Intracoastal Waterway) に沿った堤防 (levee) はおよそ 20 ヶ所で決壊し、セント・バーナード教区 (St. Bernard Parish) とニュー・オーリンズ・イースト (New Orleans East) の大半に直接氾濫した。 MRGO からの高潮 (storm surge) は産業運河に沿った洪水壁 (floodwall) の 3 ヶ所の決壊の主な容疑者でもあった。

カトリーナの 3 ヵ月前に、 Hassan Mashriqui -- ルイジアナ州立大学のハリケーン・センターの高潮 (storm surge) の専門家 -- は MRGO を工兵隊のハリケーン防衛で「危機的・基本的欠陥」と称し、高潮を 20% から 40% 増大する「トロイの木馬」 (Trojan Horse) と称した。嵐の後で、技術的調査と計算機モデルが示したことは：アウトレットは最初の高潮を 20% 増大し、水の壁の高さをおよそ 3 フィート持ち上げ、 MRGO とメキシコ湾沿岸内水路 (Gulf Intracoastal Waterway) が収束する漏斗状の地形で、高潮の速度を毎秒 3 フィート (0.9 m/s) から、毎秒 8 フィート (2.4 m/s) に増大した。 Mashriquit が信じることは、この漏斗状の効果はガルフ・アウトレット (Gulf Outlet)、沿岸内水路 (Intracoastal Waterway)、及び産業運河に沿った堤防と洪水壁 (floodwall) の根元を削った洗い流し (scouring、スカウアリング) に寄与した。『MRGO がなければ、洪水はもっと小規模であったことであろう』と彼が言い、『堤防は乗り越えられたかもしれないが、洗い流されなかったであろう。』工兵隊はこの因果関係を議論し、カトリーナは MRGO が寄与した効果があるにせよ、ないにせよ、高潮は運河の全長と垂直であったため、堤防を圧倒したことを主張した。

カトリーナの通過により MRGO は広範囲に浅くなり、深い喫水の洋上船が通過できなくなった。セント・バーナード教区 (St Bernard Parish) の当局者は直ちに、この再開通に反対した。海運業者はガルフ・アウトレット (Gulf Outlet) の再開を呼びかけたが、防御洪水ゲート (floodgate) を装備すること、あるいはインナー・ハーバー航行運河 (Inner Harbor Navigational Canal) の水門の建設計画を加速することを呼びかけ、後者は完成すれば喫水の深い商業輸送に影響せずに閉鎖できることになるであろうとした。

2007 年 5 月に、工兵隊は MRGO を全ての交通に閉鎖し、バイユー・ラ・ラウター (Bayou La Loutre、 [訳注：バイユーを参照]) に平行する自然な尾根にそろえて、 MRGO を横断する土のダムを建設することを表明した。バイユー・ラ・ラウター (Bayou La Loutre) 尾根の場所が選ばれたのは将来の湿地の復元努力を補うためである、というのは自然な尾根は湿地 (marsh and swamp) をメキシコ湾から保護する歴史的な機能を取り戻せるからである。

建設は 2008 年末に始まり、工兵隊はバイユー・ラ・ラウター (Bayou La Loutre) における MRGO を横断する閉鎖構造を 2009 年 7 月に完了した。閉鎖の建設を補うために、工兵隊は MRGO の生態系復元計画 (Ecosystem Restoration Plan) も作った。湿地と水域は MRGO の建設とその結果の因子 (例えば塩水の侵入) により被害を受けており、この計画は湿地と水域を再活性するキーとなる成分を概説している。およそ $29億の計画が含まれる：

MRGO の生態系復元計画は資金に関しての不一致から実施されなかった。米国工兵隊の地方技術者の述べることでは『私は、連邦あるいは非連邦のスポンサーの責任と経費を分かち合う条項を推薦する。..』一方、ルイジアナ州の見なすことでは『プロジェクトは完全に連邦の出費で着手すべきで、州はミシシッピ川ガルフ・アウトレット生態系復元プロジェクト (Mississippi River Gulf Outlet Ecosystem Restoration Project) に関しては何らの資金的な義務もない。』

ニュー・オーリンズに近く、$10億以上かかる 1.8 マイルの頑丈な高潮バリアーが建設された。高潮バリアは沿岸内水路 (Intracoastal Waterway) の北端と MRGO の南端を取り囲む堤防が収束することにより記述される『ロート』の狭窄部を閉鎖し、将来の高潮が産業運河のインナー・ハーバー (inner harbor、内部港) と沿岸内水路 (Intracoastal Waterway) に侵入することを防いでいる。 2 つのゲートが作られ、1 つはバイユー・ビアンベニュー (Bayou Bienvenue) にあり、もう 1 つは沿岸内水路 (Intracoastal Waterway) を横切り、通常の気象条件でハシケと他の小さな商業交通の通過を可能にしている。バリアーはこの種のものとしては米国で最大で、高さ 28 フィートまでの高潮 (storm surges) に対する防衛である。これは 2011 年に完成し、バイユー・ラ・ラウター (Bayou La Loutre) における閉鎖構造よりも、はるかに重要である。これはニュー・オーリンズ・イーストとセント・バーナード教区で接続している堤防よりも 2 フィート低い。これにより、水が堤防を乗り越えるより前に、制御構造を越えることを可能にする。


MRGO (右) と沿岸内水路の交点 I-510 の端から見た。	タグボートとハシケ、セント・バーナード教区のシェル浜辺 (Shell Beach) の MRGO