食物年貢 (Food render)

食物年貢 (Food render) あるいは食物地代 (food rent) (古英語: foster) は物納税 (tax in kind) の一形式 (古英語: feorm) であり、アングロ・サクソン時代のイングランドで課せられ、基幹食糧品 (essential foodstuffs) から構成され、レジオネス (regiones, 小シャイア)、マルティプル・エステート (multiple estate, 多重地所), あるいはハンドレッド (handreds) のような領土 (territory) で、 (領土の) ロイヤル・ビルの国王と王室メンバーに提供された。

訳注

レジオネス (regiones, 単数形 regio) は小シャイア (small shire) とも呼ばれ、アングロ・サクソン時代のイングランドの初期の領土の分割。
マルティプル・エステート (multiple estate) はアングロ・サクソン時代の土地保有の一形式。
ロイヤル・ビル ( royal vill) とはアングロ・サクソン時代の英国で、国王などの王室メンバーが定期的に周遊する王国地方領土の中央集落のこと。

中世初期のブリテン諸島 (British Isles) にはローマ帝国領英国 (Roman Britain) の都市経済を支えた基幹食料品 (essential foodstuffs) の高度なトレードがなかった。これは、単一の場所で静的に留まる、農業的に非生産の大きな王室を養うのに必要なものであった。従って、国王と側近は彼らの王国の再分割を常に周遊し、王室資産網に滞在して、ここで彼らは領土の住民により養われることを要求した。歴史家のトーマス・チャールズ=エドワーズ (Thomas Charles-Edwards) の言葉では「王室に食料を持ち込むよりは、王室を食料に持ち込む方がもっと理にかなっていた」。

食物年貢 (food renders) は国王が他の従属王国から引き出した貢物 (tribute) とは違っていた。食物年貢 (food renders) は色々な範囲の食料 (foodstuff) から構成され、バランスのとれた食事で、贈与者の領土で消費された。もしも国王あるいは王室メンバーが訪れなければ、贈与者はその年の債務から解放された。国王は、しかしながら、従属王国を定期的に周遊することがなく、そのような地区からの貢物はしばしば家畜の形を取り、容易に王国に輸送することができた。

7 世紀末のウェセックスのイネ (Ine of Wessex) の法律が 10 ハイドの地所から要求した食物年貢の一覧は：蜂蜜大樽 10 個、 300 ローフ (loaf) のパン、ウェールズ・ビールを 12 アンバー (amber)、透明ビール (clear ale) を 30 アンバー (amber)、完全に成長した 2 匹の乳牛あるいは雄ヤギ (wether)、 10 匹のガチョウ、 20 匹のめんどり、 10 個のチーズ、バターを 1 完全アンバー (full amber)、 5 匹のサケ、重さ 20 ポンドの飼料、そして 100 匹のウナギであった。訪問客の乗用の馬には牧草地も利用可能であった。

訳注

アンバー (amber) はアングロ・サクソン時代の容積の単位。

イングランドにおける慣習の食物年貢 (food render) は 12 世紀, 13 世紀を通して退潮した、貨幣がもっと容易に利用可能になったからであった。しかしながら、ウナギ年貢 (eel-rents) は少なくとも 14 世紀を通して大量に徴収され、中世末を通して少々徴収された。最後の活発なウナギ年貢は 17 世紀の記録に登場している。