ダンディ・ワゴン (Dandy waggon)

ダンディ・ワゴン (Dandy Waggon) とは鉄道車両の一型式で、重力 (を動力とする) 列車で馬を運ぶものである。これはとりわけ、ウェールズの狭軌のフェスティニオグ鉄道 (FR = Festiniog Railway) と関連し、ここでは 1836 年から 1863 年の間使用された。

FR の挑戦はスレート (粘板岩、屋根ふき用) を高い場所から輸送のために港に運ぶことであった。この場合には、ウェールズのブライナイ・フェスティニオグ (Blaenau Festiniog) からポルスマドグ (Porthmadog) までであった。 2006 年ではこれは車で 26 分で、距離にして 11.9 マイル (19.1 km) であるが、 1832 年にはこれは遠い山岳地帯であった。鉄道は平均勾配が 1:80 の上に敷設されていた。下る列車は重力により駆動し、3 回停止した。全旅程は 1 時間半であった。上る列車は 1863 年まで馬で牽引し、旅程はほとんど 6 時間かかった。従って、馬を下まで運ぶ方法を見つける必要があった。

ジョージ・スチーブンソンが次の解決を提案したとされている： 1825 年に開通したストックトン・ダーリントン鉄道の下りで馬を乗せる特別な車両の建造をすること。軌道の改善と共に馬はますます強く要求されるようになった。 1827 年までに、ストックトン・ダーリントン鉄道は信頼できない蒸気機関車で困難に陥り、蒸気機関車を諦めようとしていた。彼らは独立した請負業者の操業する馬で牽引する車両を使用することに復帰した。各馬は 25 トン程の石炭を牽引することが期待され、6 日で 3 往復した。仕事は馬にとって疲れ切るものであり、すぐにも歩行困難となった。

ジョージ・スチーブンソンは 1828 年にダンディ・ワゴンを導入した。ダンディ・ワゴンは単なる 4 輪の車両で、ほし草が供給され、 4 両編成のチャルドロン・ワゴンの後部に取り付けて、下り坂の区間では馬がダンディ・ワゴンで休むことができた。話によると、ダンディ・ワゴンがないと、馬は最後尾のチャルドロン・ワゴンに飛び乗ろうとした。

FR の場合には、これにより馬は下り坂で食事をとり、休息する機会が与えられた。スレートを積載した車両が荷を降ろせば、元気を回復した馬が空の車両を頂上まで牽引することができた。他の鉄道では、下りの区間は一般に短く、軌道の一部であっただけであるが、馬が仕事に復帰する前に休息することができた。「旅行ガイド」(ブルー・カバー) によると、ワゴン no 50 -- 一台の 4 輪の鉄製ダンディ・ワゴン (ホース・ダンディと呼ばれた) で 1861 年に建造されたもの-- はまだ存在しており、1992 年の 4 月現在にフェスティニオグ博物館に保管されている。

馬を運ぶ車両の他の名称には "ダンディ・カート" (Dany Cart) や "ダンディ・トラック" がある。これらはすべて馬が曳く鉄道の車両で、馬が丘の頂上まで牽引し、馬がこれに乗って下るもののことを指している。 "ダンディ・カート" の用語は時には馬がけん引する乗客列車のことも指す。

ほとんどすべての初期の鉄道では、蒸気機関車が発明されるまでは列車の動力として馬を使用した。

バロックニー鉄道 (Ballochney Railway) は 2 基の「バロックニー・インクライン」で「ダンディー・カート」を使用した。このインクラインは各々傾きがおよそ 1：23 であり、1000 ヤードの距離があった。下降する列車はロープと滑車により、上昇する列車に接続されていた。下降する列車の重さが上昇する列車を丘まで引き上げていた。

訳注

ここで記述されているインクライン (incline、坂道) は運河のインクライン (canal inclined plane、運河の傾いた平面) と原理は同じで運河と同様に inclined plane (傾いた平面) と呼べます。運河のインクラインの場合には平衡を取るために水が利用できます。 (これができなくても水力を使用できる。) バロックニー鉄道の場合には多くの鉱山鉄道と同様に、下りのみが鉱石を積載し。上るほうは荷を積んでいないと思われるのでブレーキによる制御となるようです。

フェスティニオグ鉄道の地形がこのような創造的な解決方法を全牽引区間の大きな部分に適用可能とすることに幾分かの影響があったのかもしれない：比較的軌道が長く、もっぱら 2 点間を走り、比較的一定の連続した傾きが維持されている。

1828 年にアルフレッド・ポーコック (Alfred Pocock) はレールがなく馬もいない車両で凧による駆動されるものを開発していたが、凧の車両がダンディ・カートを牽引し、これでポニーを運び、風向きが悪くなった時にポニーを使用することを提案した。

英国では鉄道とトラムウェイの初期にはどちらの綴りも認められていた。英国では今日、国内の列車操業ではつづりは wagon である。フェスティニオグでは 19 世紀の間はどちらの綴りでもよかった。今や庶民は一個の g の方を良く使用する。しかしながら貨物列車を指す時には waggon を使用する方がいまだに一般的である。イングランドでは wagon は一台のワゴンを指す時に使用され、 waggon あるいは waggons は一台よりも多いワゴン、例えば列車を指す時に使用される。

ダンディ・ワゴン (Dandy Wagon, 地域的に正しい綴り) は 1800 年代に米国で、馬が曳く個人用のバギー (buggy, 1 頭の馬が曳く軽装馬車) のことを指しことに使用された。