トライボロウ橋 (Triborough Bridge)

トライボロウ橋は 2008 年以来、公式にロバート F. ケネディ橋 (Robert F. Kennedy Bridge) と呼ばれ、時には RFK トライボロウ橋と呼ばれるが、これはニューヨーク市における 3 つの分離した橋の複合体である。橋はマンハッタン、クイーンズ、そしてブロンクスの 3 区 (ボロウ、borough) をランドールズ島 (Randalls Island) とワーズ島 (Wards Island) を経由して接続するものである。ランドールズ島とワーズ島は埋め立てによって地続きになっている。橋の複合体は州間道路 278 と道路表示のないニューヨーク州道 900G が次の道路を接続している：

これらはランドールズ島とワーズ島を横断する高架道路と支援道路で接続されている。複合橋の 1 部分には立体交差で分離される T 型インターチェンジがあり、これが交通をソート (sort) して、ドライバーが料金所の唯一の場所で通行料を支払うようにしている。

橋の複合体は主任技術者のオスマー・アマン (Othmar H. Ammann) と建築家のアイマー・エムバリ II (Aymar Embury II) によりデザインされ「かって建設された最も大きな交通機械」と呼ばれた。米国土木技術者学会 (American Society of Civil Engineers) はトライボロウ橋プロジェクトを 1986 年に国内歴史的工学ランドマーク (National Historic Engineering Landmark) に指定した。

橋は大都市圏交通公社 (MTA, Metropolitan Transportation Authority) の 1 部分である MTA 橋梁・トンネル (MTA Bridge and Tunnels) により所有・操業されている。

マンハッタン、クイーンズ、そしてブロンクスを接続する計画は 1916 年にニューヨーク市のプラント・構造局の主任技術者であるエドワード A. バーン (Edward A. Byrne) により始めて提唱された。このような複合橋の建設は長い間、地元の当局者により推奨されていたが、プロジェクトは 1925 年に至るまで資金を獲得することに失敗していた。しかし、1925 年に市は測量、試験ボーリング、そして構造計画のための資金を割り当てた。建設は 1929 年 10 月 25 日 -- この日はブラック・フライデー -- に開始したが、すぐにもトライボロウ・プロジェクトの見通しは暗澹たるものとなりはじめた。主任技術者のオスマー・アマン (Othmar H. Ammann) は元々の 2 階建ての橋のデザインを 1 階建てにして、塔を軽くし、従って橋脚を軽くして、塔だけでも $1000万を節約し、再びプロジェクトの推進に参加したが、タマニー・ホール (Tammany Hall) の汚職、証券市場のクラッシュ、そしてそれに続く大恐慌により、プロジェクトは事実上停止した。これは投資家がプロジェクト資金に必要となる市の債権を購入することを差し控えたからである。 1932 年の春までにプロジェクトは瀕死の状態になった。

プロジェクトはロバート・モーゼズ (Robert Moses) によって復活し、彼は州の議員を無理強いしてトライボロウ橋梁公社 (TBA, Triborough Bridge Authority) を作らせ、公社に橋の資金繰り・建設・操業にあたらせた。

モーゼズが直面した事態は、市が必要な橋の進入路の計画をしておらず、あるいはこのような道路建設に明らかに必要となる土地を購入さえしていなかったことである。このような土地は初期であれば安値で手に入れることができたはずのものであった。モーゼズがこの問題を解決した典型的な方法は、橋に交通を流入させる新しい道路とパークウェイを提案することであり、これらが彼がすでに建設済みのものに接続することになった。道路の複合体には：クイーンズのグランド・セントラル・パークウェイ、アストリア・ブールバード；マンハッタンのイースト・リバー・ドライブの延長 (現在の FDR ドライブ)；ブロンクスのウィットロック・アベニュー (Whitlock Avenue)、イースタン・ブールバードが含まれていた。

改革者はモーゼズの計画を取り入れたが、州と市の当局者はそのスケールに圧倒され、巨大なシステムに資金を与えることに遅々とした。モーゼズは公社における彼の指導的地位をてこにした、 -- これは彼がタマニー・ホールから橋のコントロールをもぎ取った後のことである -- これには更に彼が保持した州と市の地位が含まれ、プロジェクトを再開させ、建設が 1933 年 11 月に再開した。まもなく資金はニューヨーク市と公共事業局 (PWA) のようなニューディール政策の下の連邦政府からのものであり、 PWA にはモーゼズ、PWA の管理者であるハロルド L. イッキーズ、フランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領、ニューヨーク市長フィオレロ・ラガーディア (Fiorello H. LaGuardia) による複雑な政治的な内紛があり、これによりモーゼズはほとんど彼の仕事を失いかけた。他の主な資金源は利息が付くトライボロウ橋梁会社 (TBA) の発行する債券であり、ニューヨーク市ではなかった。これらの債権は将来の通行料を担保にしていた。

トライボロウ橋のプロジェクトの規模はその進入路も含め、何百ものアパートが橋に取り壊されることも含まれていた。橋は「メイン州からミシシッピー州まで」の工場のコンクリートを使用し、ペンシルバニア州の 50 の工場の鋼を使用した。コンクリートを流し込むための型枠を作るために太平洋岸の 1 つの森に相当する木が伐採された。モーゼズの伝記作者である Robert Caro は次のように述べている：

トライボロウは橋ではなく、交通機械であり、かって建設されたもので最大のものである。この建設に費やした人間のエネルギー量はその巨大さに関しての考えを幾分提供している： 5000 名以上もの人が工事現場で働き、しかもこれらの人はその何倍もの人によって製造された物資を所定の位置に設置しただけで、これによりトライボロウ橋が完成したのである。橋の建設は 20 の州にまたがる 134 都市の 31,000,000 マンアワー (man hour) の仕事を生成したのである。

ニューヨーク・タイムズ により "Y の字型のスカイ・ハイウェイ" と呼ばれた構造は 1936 年 7 月 11 日に中央スパンで開催された儀式で落成した。参加した人は：ルーズベルト大統領、ラガーディア市長、ニューヨーク州知事のハーバート H. レーマン、公共事業局管理者のイッキーズ、郵政公社総裁のジェームズ A. ファーリー (James A. Farley)、そしてモーゼズで、モーゼズが儀式を取り仕切った。大統領とモーゼズの間の確執から、ルーズベルトの出席は最後まではっきりしなかった。儀式は全国ネットのラジオで放送された。

橋の建設は PWA の東部における最大のプロジェクトで、その建設費は $6000万以上で -- 2015 年の価格では 10億ドル以上 --、大恐慌の公共事業では最大のものの 1 つで、フーバー・ダムより費用がかかった。費用の $1600万はニューヨーク市からのもので、$900万は PWA が直接与え、 PWA はまた TBA の債権を $3500万購入した。これはまもなく買い戻され、一般の人々に再販売された。橋の操業の初年度に $270万の通行料 -- 2015 年では $4640万に等価 -- が 965 万台の車両で生み出された。トライボロウ・プロジェクトの副産物は橋と進入路の下の公園と遊び場の創生で、これはワーズ島、ランドールズ島、アストリア、そしてマンハッタンにある。

1996 年 8 月 21 日に、ドライバーはランドールズ島の自動料金精算機で E-ZPass が利用できるようになった。

過去のある時期に、橋に「攻撃がある場合には橋を降りてください」の表示があった。ニューヨーク・タイムズのコラムニストであるウィリアム・サファイアの書くところによると「少々ぞっとする表示」で「何百万人ものドライバーの皮肉な笑いを誘う」に違いないとした。

2008 年 11 月 19 日にトライボロウ橋はケネディ家の要請により、公式に「ロバート F. ケネディ」に改名された。ニューヨーク州上院議員且つ前米国司法長官が 1968 年の大統領就任中に暗殺されてから 40 年が過ぎた。交通とニュースでは元々の名前に長く慣れ親しんだ住民の間の混乱を避けるために、一般に「RFK トライボロウ橋」と呼ぶようになった。

2015 年に、MTA は橋の異なる場所で 2 つの修復プロジェクトを開始した。これは橋の複合体を修復するための、15 年間で $10億の計画の一部である。 MTA はクイーンズとブロンクスの橋の間にある 1930 年代の料金所の修復を $21300万の経費で開始した。これには路面と下の支持構造の再建が含まれている。新しい料金所は 2019 年に完成する。これに付け加え、マンハッタンの橋から北向きのハーレム・リバー・ドライブに至るランプ (ramp) が $6830万の経費で建設されることになり、ランプは 2017 年 12 月に完成予定である。

トライボロウ橋の通行料収入はニューヨーク・シティー・トランジット・オーソリティ (ニューヨーク市公共輸送公社、New York City Transit Authority) と通勤鉄道の公共交通助成金の一部に支払われている。橋は 2014 年で平均すると、1 日あたり 164,116 台の交通があった。この年には、料金を支払う交通が 2.9% 増えて、5990万台となり、 $39360万の収入があり、一台当たりの平均の通行料は $6.57 であった。

3 本の橋にはすべて側道があり、TBTA は安全への懸念から、公式には自転車を降りて、自転車を押すことを要請している。しかしながら、これを要求する標識は通常、自転車に無視されており、ニューヨーク市は TBTA に自転車禁止のようなことに関して再評価することを勧めている。クイーンズにある階段は身体障害者の進入を妨げている。南側に沿ったクイーンズの階段は 21 世紀の初頭に取り壊されて、この歩道が孤立した。北側に沿った歩道のワーズ島の終端のランプ (ramp) は 2007 年に改良された。ブロンクスの橋の 2 本の側道はランドールズ島の終端で接続されて 1 つのランプ (ramp) になっている。

訳注

TBTA (Triborough Bridge and Tunnel Authority) とは MTA 橋梁・トンネル (MTA Bridge and Tunnel) のことで、元々 TBA (Triborough Bridge Authority) が母体になって何度も合併してできた組織。
「クイーンズの階段」(北側)：ストリートビュー
「ワーズ島のランプの改良」：ストリートビュー
「1 つのランプになっている」：フォトスフィア
ヘル・ゲートの吊り橋を越える歩行路は Google map で「Robert F. Kennedy Bridge Trail」として表示されている。

2017 年 3 月 19 日から郵送による通行料は乗用車 $8.50、オートバイ $3.50 となる。ニューヨーク州 E-ZPass 顧客サービス・センターの発行する E-ZPass 車載器があれば、乗用車 $5.76、オートバイ $2.51 である。ニューヨーク州顧客サービス・センターの発行していない E-ZPass 車載器の場合には現金もしくは郵送で支払うことが要求される。

オープン・ロード方式による料金徴収が 2017 年夏に始まる。料金所は徐々に取り壊し、橋では現金を支払うことができなくなる。その代わりに現在料金所がある場所の近くに新しいガントリーの上にカメラが設置される。 E-ZPass を所有していないドライバーはナンバー・プレートが撮影され、料金が郵送で請求される。 E-ZPass の利用者はセンサーが車載器を無線で検知する。

訳注

ここの箇所の説明はマリーン・パークウェイ=ギル・ホッジス記念橋の料金の説明と重複します。比較して読んでください。

トライボロウ橋は MTA ニューヨーク・シティー・トランジットの運行する M35, M60, x80 のバスルートが通り、 MTA バス会社の運行する急行バスの 9 ルートが通っている：BxM1, BxM2, BxM6, BxM7, BxM8, BxM9, BxM10, BxM11, BxM18。

1920 年代にニューヨーク市のトランジット委員会は BMT アストリア線を現在トライボロウが走っている同じルートに拡張することを考えた。提案では 125 番ストリートに沿って町を横切る地下路線を作ることになっていた。


トライボロウ橋のクイーンズ、ワーズ島間の橋の空からの光景、イースト川に架かる。クイーンズは手前。	3 つの橋の交わる所