サン=ルイ=アルスヴィレ・インクライン
以下の文書は次のページの翻訳です。
Saint-Louis-Arzviller inclined plane - Wikipedia
このインクラインはとても有名なインクラインですが、日本語のページではほとんど出てこないし、 出ていてもカナ表記が妙で、ろくな説明がない。
このインクラインが有名なのは船を浮かべた横向きのケーソン (水槽) が上下する珍しい型式だからです。 フォクストン・インクラインも同じ形式だったようですが現在は残っていない。 次で動画が見れます。
Saint-Louis-Arzviller inclined plane (YouTube)
サン=ルイ=アルスヴィレ・インクラインはマルヌ・ライン運河 (仏語 Canal de la Marne au Rhine) の一部で、サン=ルイの コミューンに属し、 これは モゼル県のサン=ルイとアルスヴィレの市街地の中間にある。 このインクラインにより運河が ヴォージュ山脈を越えることが可能となっている。
マルヌ・ライン運河は 1838 年から 1853 にかけて建設された。 運河が解決した問題はヴォージュ山脈を通り抜けることで、 とりわけ山脈の東側を登り、山脈の低い場所 -- コル・ド・サヴェルヌ (サヴェルヌ峠、Col de Saverne) -- まで到達することであった。 これは最初は 17 基の水門のハシゴにより解決され、 4 km の距離で全高低差の 44.45 m を達成した。 1969 年に、この複数の水門をサン=ルイ=アルスヴィレ・インクラインで置き換えた。
自己推進するハシケが到来するまでは、 ハシケは 2 匹から 4 匹の馬やラバで曳き、 これは 20 世紀初頭まで続いた。 次に牽引車が登場し、最初は鉄道の上を走り、 1933 年からはタイヤで走り、最初は電動モーター であったものがディーゼルエンジンに代わった。
前進を開始するには多くのエネルギーが必要であった。 従って、水門を経由して移動することは、 とても骨が折れ、疲れ、費用がかかり、そして長かった。
314 km と 17 基の水門により、ヴィトリー=ル=フランソワ (Vitry-le-François) からストラスブール (Strasubourg) までの行程は 6 日から 9 日かかった。 アルスヴィレの水門のハシゴを使用するだけで丸 1 日かかった。
付け加えると、この区間の幅が狭いため、2 隻のハシケがすれ違うことは、かろうじて可能であった。
各水門ごとに 1 人が必要であった。 これらの 17 基の水門の管理人は 1 週間に 7 日、1 日におよそ 10 時間、水門の面倒をみる必要があった。 彼らは運河の近くにある国有の家に住んでいた。彼らの任務は：
冬には運河を整備するために水が抜かれた。
17 基の水門は多くの水を浪費した。 (ボート 1 隻、水門 1 基あたり 600 立方メートルで、これに水漏れが加わる。) 夏には、水の需要が、周辺で利用可能な小川や池でまかなえる量を越えた。
国際コンテストに提出された幾つかの計画は順番に調べられて拒絶された。 というのは、提出された幾つかのシステムは、 とりわけ、ベルギーのロンキエール・インクライン (1967 年) のように、 縦方式であり、ヴォージュの場所にはまったく適していなかったからである。 横方式のシステムはこの場所の地勢に最も適合するもので、 古い運河をそのまま使用することが可能で、 航行時間を随分と削減することが可能であった。 この時点までに、この形式で建設されたのは、 レスターシャー、フォクストンのフォクストン・インクライン (1900 年) のみであった。
新しいインクラインは 1969 年に開通した。
システムは、基本的にはボートを格納したケーソンを車両に載せて、 坂道を昇降させることによって動作する。 この際に均衡をとるカウンターバランスを使用する。
アルキメデスの原理により、 ケーソンに進入したボートは自重と同じ重さの水を運河に排出する。 従って、ケーソンは、中にハシケが居ても、居なくても常に同じ重さである。
原理的には、システムはエンジンがなくても動作する。 実際、ケーソンは上層で運河の水面より 20 cm 低い位置で停止するため、 より多くの水を積載し、下層では水面より 20 cm 高い位置で停止するため水の積載量が少ない。 エンジンが制御するのは速度のみで、 輸送重量に比較して、比較的小さな出力が要求されるだけである。
キーとなる数値：
|
|
|
| 上からの光景 | ケーソン | |
|
|
|
| 持ち上げゲート | 機械室 |
最初は 2 台のケーソンが計画された。 しかし、水運の衰退により、1 基のみが建設された。
サン=ルイ=アルスヴィレ・インクラインは 1 日に 39 隻のハシケを運ぶことができる。 1 回の昇降時間は 4 分で、 入ってから出るまでの全輸送時間は 20 分になる。 インクラインには 2 人が詰めており、 1 回の輸送ごとに水の損失は 40 立法メートルで、 電気の消費量は 40 メガ・ジュール (10 kWh) である。
商用の水運の凋落は部分的には観光旅行で相殺され、 年間 数千台のプレジャー・ボートを輸送している。
交通の進化：
21 世紀の始めから、商用輸送がわずかに増え、観光輸送がわずかに減少した。 エネルギー・コストがいまだに上昇しているため、 これはもっと続くかもしれない。
サン=ルイ=アルスヴィレ・インクライン観光協会はこの場所が開通した時以来、 ガイドによる案内をしており、年間でおよそ 150,000 人の観光客がある。 これにより、この場所は ロレーヌで最も観光客が多くなっている。
地方時間で 12 時の少し前に、 観光協会所属の観光用のハシケの「パリ」がケーソンに進入しようとした。 この時、突然ケーソンが動いて、21 人の観光客を乗せたハシケが詰まり、 大量の水が下の谷に押し寄せた。 緊急隊が広範囲に活動し、近くのキャンプ場やルッツェルブール (Lutzelbourg) の レストランから多くの人を避難させた。 運河が閉鎖され、徹底的な調査が実施され、数ヵ月間閉鎖されると思われている。 これはこの地帯のボートの賃貸業者に大変な痛手となった。 ホリデー・シーズンが真っ盛りになろうとしていたからであり、 ニドゥルヴィエ (Niderviller) とサヴェルヌ (Saverne) の間の運河の区間は この地方で最も景色のよい所であったからである。