スミートンの塔 (Smeaton's Tower)

スミートンの塔は土木技術者のジョン・スミートン (John Smeaton) の記念碑で、彼は 3 台目の、もっとも顕著なエディストーン灯台 (Eddystone Lighthouse) のデザイナーであった。スミートンの構築物は、灯台のデザインで進展する重要な一歩であり、 1759 年から 1877 年まで使用された。灯台は建造されている岩礁が浸食され、終に新しく建設することを余儀なくされた。灯台は大まかには分解されて、デボン州プリマスのプリマス・ホー (Plymouth Hoe) に再建され、現在はここに立っている。

訳注

プリマス・ホーは公園 (public place) です。下の写真の緑地帯です。中央にスミートンの塔が見える。

Google フォト・スフィア：スミートンの塔

王立学会は灯台建設の仕事にスミートンを推薦し、スミートンはオークの木を灯台のモデルにした。彼は「水硬性石灰」 (hydraulic lime) の使用を再発見した。これはローマ時代に使用されたコンクリートの一型式であった。【訳注：ローマのコンクリート参照。】この技術により、コンクリートを水面下で使用することが可能となり、これはスミートンがありつぎ (dovetail joint) と大理石のダボ (dowel) で花崗岩のブロックを接続した方法である。

建設は 1756 年にミルベイ (Millbay) の現場で開始した。この場所にスミートンは桟橋を建設し、港の南西の角に、石を荷揚げして加工する作業場所を建設した。 3 フィート 6 インチ (107 cm) のゲージの木のレールが 4 輪の平面トロッコ (flat truck) 用に敷設された。平面トロッコは作業場所で石を移動することに使用された。 エディストーン・ボート ( Eddystone Boat ) と呼ばれる 10 トンの船が、ここに基地を置き、仕上げられた石を岩礁 (reef) まで輸送した。この船は 2¹/₄ トンの基礎石を 1756 年の 6 月 12 日の朝に運んだ。

訳注

ありつぎとダボはどちらも木工技術で、洋の東西を問わない。アイアンブリッジでも類似のことをしている。

工事は 1759 年の 8 月に完成し、建設費は £40,000 (現在の価格ではインフレ込みで £5,525,926) であった。

多くのコーンウォールのスズ鉱山の鉱夫達が建設に採用された。これは強制徴募を避けるためで、この時期には随分あった。トリニティ・ハウスはプリマスの海軍本部と取り決めて、労働者は強制徴募を免除された。各労働者は灯台の労働者であること証明するためにメダルが交付された。

訳注

トリニティ・ハウス (Trinity House) はイングランド、ウェールズの灯台の管轄組織で、航行補助の目印の配置と保守が仕事。(Trinity House)

灯台は高さが 72 フィート、基底部の直径が 26 フィート (8 m)、頂上部の直径が 17 フィート (5 m) であった。

構造が完成してから、灯台の 24 本のろうそくが 1759 年 10 月 16 日に点火された。各ろうそくの重さは 2 ポンド (0.91 kg) から 5 ポンド (2.3 kg) の間であった。光のそばに置かれた時計が半時間ごとにチャイムを鳴らすように設定され、灯台の管理人に消えたろうそくを取り換える必要があることを注意した。

1810 年に灯台のろうそくは、オイル・ランプ (oil lamps) と反射鏡で置き換えられた。更なる大規模な修復が技術者のヘンリー・ノリス (Henry Norris) により 1841 年に実施され、この時に塔の基礎に近い岩の穴が埋められた。 4 年後に、オイル・ランプと反射鏡は、改良されたランプとフレネルレンズ (Fresnel lens) で交換された。

灯台は 1877 年まで使用されたが、この時、灯台が立っている岩が侵食され始めていることが発見された。大きな波が押し寄せるたびに、灯台は右に左に揺れた。

スミートンの塔は 1882 年 2 月に操業を停止した。これは、隣接した岩の上に当時建設中であった後継 (ダグラスの灯台 (Douglass's Tower)) が一時的に点灯された後のことであった。 1882 年に、スミートンの塔の上の部分は分解されたプリマス・ホー (Plymouth Hoe) の新しい基礎の上にスミートンの記念碑として再建され、 19 世紀始めに航行の助けのためにトリニティ・ハウス (Trinity House) により、ここに建設されていた三角形のオベリスク (triangular obelisk) の代わりになった。

この場所は 1884 年 9 月 24 日にプリマス市長 (Mayor of Plymouth) により一般に公開された。

昔の塔の基礎と切り株 (stub) は現在の灯台の近くのエディストーン岩礁の上に残っている。基礎はあまりに強固で分解できないことが判明したので、そのままに残された。 1860 年に、新しいペニー硬貨が流通し、この表面にブリタニア (Britannia) の背景に灯台が描かれ、1894 年までペニー硬貨に残った。灯台は 19 世紀にデボン (Devon) で発行された幾つかの代用貨幣 (token) にも描かれ、額面は 2 ペンスから 1 シリングであった。

スミートンの灯台の 1850 年のレプリカであるホード記念碑 (Hoad Monument) は海軍の行政官であったサー・ジョン・バロー (Sir John Barrow) を記念して、カンブリア、ウルバーストン (Ulberstone) の町の上に立っている。

訳注

「町の上に立っている」というのは町を見下ろす丘の上に立っているという意味です。 Google フォト・スフィア：ホード記念碑

1913 年 4 月 19 日に、自家製の爆弾で外側に、「女性の参政権」と「10 分以内の死」と書かれたものが、スミートンの塔の入り口で見つかり、恐らくは女性参政権運動の一部分であった。芯に火がつけられたが、風で吹き消され、爆破されなかった。

スミートンの塔は954年以来グレード I の指定建造物 (listed-building) である。観光客に公開されて、93 段登って (これには急な梯子が含まれる) ランプ室 (lantern room) に出て、プリマス湾 (Plimouth Sound) とプリマス市を眺めることができる。

訳注 (sound に関して)

Plymouth Sound の sound の意味は英和辞典でも、英英辞典でも載っていない可能性があるので、少々付け加えます。元々は Øresund の短縮形で、スウェーデンとデンマークの間の海峡のことです。北ヨーロッパでは sound (あるいは sund) は海峡、もしくは海峡の一番狭い部分を意味します。しかし英語では統一的な意味がなく、Plymouth Sound のような地名に使われているだけです。 (日本語に訳する時には地図で確かめてから該当する日本語を選ばないといけない。) 以上は Sound (Geography) の一部。

2009 年 10 月 15 日に、英国土木学会 (Institution of Civil Engineers) によって組織された祝賀の一部分として、スミートンの塔のランタン (lantern) が再びもう一度 24 本のろうそくと共にともされ、灯台に最初の灯火がともされて以来 250 周年を記念した。


塔の底部の断面図におけるありつぎのデザイン	エディストーン岩礁の灯台の当時の彫刻


アントン・ベルビュー (Anton Melbye) の絵画, 1846 年	プリマス・ホーのスミートンの灯台


プリマス・ホーにおけるスミートンの塔	塔の近接写真	ランタン室を通り抜ける日の光


2009 年にろうそくで照らされた塔、250 周年記念	ティンサイド・プール (Tinside Pool), プリマス湾	スミートンの塔の基礎はまだそのままの位置で、現在のエディストーン灯台の横にある。