箱船 (川船)(Ark (river boat))

北米の産業発展の初期の頃に、箱船 (ark) は北米東の河川輸送に使用された一時的な船のことで、停滞水域運河 (slack-water canal、水門システムと適切なダムにより双方向移動を可能にするもの) と鉄道がこれを時代遅れにする以前のことであった。これらは比較的粗削りな手工具 (hand tools) を使用して建造できるので、箱船 (ark) はアメリカ植民地時代と共和制初期の時代に建造され、主に春の増水時に貨物を下流に運ぶことに使用され、とりわけ、材木、木炭などの森林製品、かさばる農産物を下流の都市あるいは港に運ぶことに使用された。これには何週間もかかり、筏には乗務員の支援生活区 (crew support quarters) が付随していた。深い河川は大きな丸太の箱船 (log ark) を可能にした。これは制御しにくい筏ではなく、以下で説明されるものである。 1800 年以来、大半の東部の町と市は、暖房用の燃料が少なくなり^[1]、処理がまずい木材や厚板でさえ、目的地で簡単に売却できた。

しかし、箱船を最も頻繁に輸送に使用したのは、米国東部における長期間に及ぶ最初のエネルギー危機^[1]緩和の燃料として石炭を届ける役目であり、 1816 年におけるジョサイア・ホワイト (Josiah White) のベア・トラップ水門システム (Bear Trap Lock system) の発明によっていた。このメカニズムにより「制御された人工的に作られた洪水」^[3] (controllable artificially created freshets) が可能となり、 45 マイル (72 km) の「下流リーハイ運河」 (Lower Lehigh Canal) の開通 (1818 年 - 1820 年頃) を可能にし、これにより、従って最初の大量の無煙炭の出荷を可能にした。完全に十年間に、ますます大量の箱船が建設され、 105 マイル (169 km) をフィラデルフィアのドックまで送られた。

長期間遅れた^{[訳注 a]} デラウェア運河が 1831 年に部分開通して、別の形の川船に変えることができるまでに、リーハイ石炭・水路会社 (Lehigh Coal & Navigation Company) は広大な木材の木立を毎年破壊した。これはリーハイ川峡谷 (Lehigh River Gorge) 上流の険しい流域にあり、フィラデルフィアの (石炭の) 需要に応えるためであった。ペンシルバニア州の歴史家のフレッド・ブレンクマン (Fred Brenckman) は「カーボン郡の歴史」 (The History of Carbon County) の中で言及していることによると、 1831 年に LC&N による箱船 (Ark river craft) の製造は端から端までつなぐと全部で 13 マイル (21 km) 以上になった。

リーハイで初期に使用されたボートは幅が 16 フィートから 18 フィート、長さがおよそ 25 フィートの四角い箱、あるいは箱船であった。

最初は、これらの 2 つが蝶番で接続され、ダムと導水路 (sluice) を通過する時に起きる振動が許容された。労働者が仕事に慣れ、水路がまっすぐになって改良されると、節の数が増大し、終に全体の長さが 180 フィートに到達した。これらは長いオールで筏のように操作した。

この形のボートは 1831 年末までリーハイで使用された。この年には石炭が 40,000 トン以上、川を下り、このためには実に多くのボートを建造する必要があり、すべてのボートを 1 列につなぐと 13 マイル以上の距離に及んだ。

フレッド・ブレンクマン、ペンシルバニア州公式歴史家、「カーボン郡の歴史」 (Fred Brenckman, Officail Historian of Pennsylvania, History of Carbon County) (1884 年)

到着すると、貨物は売却され、箱船は分解されて、材木も売却され、箱船のパイロットは徒歩あるいは馬で帰還した。船舶は遅いが安定しており、熟練した乗組員はとても狭い場所を通り抜けることができた。他の船舶は通常はバトー (batteau or bateau、平底の川船) で、普通は箱船のそばで働き、馬と寝台、そして補給は、より大きな安定した箱船で下った。ペンシルバニア運河システム (Pennsylvania Canal System) とサスケハナ川システム (Susquehanna River System) の箱船によっては、長さが 75 フィート (23 m) までであるが、モジュラー箱船列 (modular ark train) は 230 フィート (67 m) の長さまで組み合わせることができ、一度に半分だけ下り水門 (descending lock) を通過できだけのみあった^{[注釈 b]}。

ウェスト・バージニア州 (West Virginia) のグリーンブライアー川 (Greenbrier River) 内の箱船は調理箱船 (cooking ark) を除けば平均して 60 フィートであり、調理箱船はきこりに 1 日 4 回食事を提供するのに使用された。箱船はウェスト・バージニアのグリーンブライアー川 (Greenbrier River) 沿いで、かっては普通に見ることができ、春の洪水がポカホンタス郡 (Pocahontas County) からグリーンブライアー郡 (Greenbrier County) までホワイト・パイン (white pine) を何マイルも運んだ。これらの巨大な船舶の写真はウェスト・バージニア州の Galdwell の町のグリーンブライアー川トレイル (Greenbrier River Trail) のそばに表示されていた。これらの写真は W.E.ブラックハースト (W.E.Blackhurst) の本「洪水ライダー達」 (Riders of Flood) の不可欠なシーンを描写している。著者は世紀の変わり目にまだできていないモノンガヒラ国立森林公園 (Monongahela National Forest) 地域内の川の伐採時代の世界の話に基づいていた。彼は歴史的詳細に細部まで興味を持っていた。この中で彼は川の箱船のとてもはっきりした説明の 1 つを与えている。

箱船は頑丈な丸太の土台の上に建設された。重い丸太は横に並べて、長さ 60 フィート、横 24 フィートの筏を作った。横方向に 4 フィート毎に、ラッシング棒 (lash pole, ヒッコリー (hickory) あるいはローカスト (locust) のロープ細工 (lashing)、 [訳注：ラッシングは荷崩れ防止のためのロープやワイヤのこともあるし、ロープと丸太で作る建築現場の足場のようなものも指す]) が置かれた。これらは直径がおよそ 6 インチであった。ラッシング棒 (lash pole) が基礎の丸太を横切る場所で、ホワイト・オーク (white oak) を曲げて作った、強い U 字型の弓 (bow) がこれを丸太にしっかり固定した。弓 (bow) は (断面が) 1.5 インチ平方のまっすぐなオーク材 (oak) から作られ、 U 字型に曲げられた。両端は四角いまゝ残され、弓 (bow) の中間は削られて (断面が) 丸くなっていた。ラッシング棒の両側に、四角い穴が基礎の丸太の中に深く切り込まれていた。これらの穴に四角い端が突っ込まれ、弓をラッシング棒 (lash pole) にきっちりと抑えつけた。ラッシング木材 (lash wood) の強い楔が四角い端の各々を定位置に保持した。

(断面が) 6×6 の切断された材木が、長い台の長さ方向に走り、鞭打ち棒の上に安置された。これらは筏の上に設置された低い建物 (building) の基礎になった。これらは厚板の支持台でもあった。建物 (building) は鋸で切った材木の簡単な長方形の小屋で、上向きの間柱材 (studding, まばしらざい) に長さ方向に釘付けにされていた。屋根は楔で固定さておらず、丸くなっていた。これは、異なる弓 (bow) に橋渡した曲がる屋根板の単純な手段により達成された効果であった。

この建物は筏の床全体を覆っていなかった。各両端には長さ 6 フィートの空間が残され、両端に沿って、壁がわずか 2 フィートに設置され、建物の横に細い通路が残された。筏の 4 つの角の各々に、皮をはいだ木の頑丈なポスト (post, 棒) が立っていた。これらは (船の) 係留ポスト (snubbing post) で、このように設置されているのは箱船をごの角 (かど) でも係留できるようにするためであった。ダンカン (Duncan) が係留ポスト (post) を注意して眺めているのを見て、ウォーリック (Warwick) が説明したことは、『これはリンゴの木です。知りうる限りでは、ロープがこすれて粗くならない、唯一の木です。』

ダンカン (Duncan) の興味は操舵の配置 (Steering arrangement) により鋭く目覚めた。丸太の台の両端に短い丸太が設置され、これは下の丸太にしっかりと固定されていた。この基礎の上に、上向きに突き出ているのは滑らかで強い木造ピンであった。ピンの頂上は、長い操舵用旋回棒 (steering sweep) のハンドルに突き上がり、従って回転軸 (pivot point) になっていた。旋回棒 (sweep) は横から横に旋回できたが、常に滑らかな上向きのピンの上にしっかり固定された。

旋回棒 (sweep) 自身は長さがおよそ 20 フィートぐらいの先細の棒 (pole) であった。小さい方の端の 6 フィートは回転軸 (pivoting pin) を越えて甲板の上に突き出ていた。長い方の端は水の上に出ていた。水の上の端には長さ 10 フィート程の広い木造の羽根 (blade) が取り付けられていた。重い旋回棒 (sweep) を旋回して、ぎこちない弧を誘導するには各旋回棒 (sweep) のハンドルに 2 人の力が必要であった。

小さな建造物はほゞ 3 つに分割されていた。各端には 2 つの馬小屋があった。中央の空間には馬のエサ、道具、そして乗務員の睡眠区画があった。

毎年 9 月には、ウェスト・バージニアのロンセバート (Ronceverte) の町は「洪水ライダー達」 (Riders of Flood) の劇を主催し、同じ標題の本に基づいている。この中で、川の箱船の規模を小さくした縮小模型がセットの一部となり、プロジェクトの歴史的正確さの背景である。

ニューヨークのアークポート (Arkport、[訳注：箱船港]) の村は、この形式の輸送からその名称を得ている。