クロフトン揚水所 (Crofton Pumping Station)

イングランドのウィルトシャー州 (Wiltshire) のグレート・ベッドウィン (Greate Bedwyn) 村の近くにあるクロフトン揚水所はケネット・エイボン運河の頂上区間 (summit pound) に給水している。

蒸気動力の揚水所が保存され、指定された週末に操業している。ここには 1812 年製のボウルトン・ワットの蒸気エンジンがあり、「動作可能なビーム・エンジンで、いまだに元々のエンジン室にあって、設置された時の仕事を実際にいまだにすることができるものとしては世界で最古である」とされている。

運河が建設された時、通常の重力により頂上区間に給水する信頼できる方法がなかった。しかしながら、使用可能な一連の泉が頂上区間 (summit pound) の 1 マイル (2 km) 東の運河のルートに隣接し、運河より低い場所に見つかった。クロフトン水門群に属する水門 60 【訳注：水門には通し番号が付いている】の下にあるこれらの泉から給水するための準備をした。数年後には貯水池 (ウィルトン・ウォーター) が建設され、今でも揚水所から運河を越して見ることができる。

水門 60 の下からの水は、暗渠により、揚水所の井戸まで導かれる。揚水所は運河よりは 40 フィート (12 m) 高い丘の中腹に建設されている。ポンプにより、この井戸から水が汲まれ、揚水所のそばの給水水路 (フィーダー水路, feeder channel) に放出される。水はこの水路に沿って、重力により流れ、西に 1 マイル (1.6 km) 上流の (運河の) 頂上区間に到達する。

訳注

クロフトン揚水所は運河の地図のケネット・エイボン運河の地図に書き込んであります。グーグルの地図には Crofton Beam Engine と書かれており、ここから給水水路が伸びていることもわかります。地図には「カナル・フィーダー」と書かれています。ケネット・エイボン運河の頂上区間 (summit pound) はブルース・トンネルを含む区間でこれを境にして、水門のゲートがトンネルの方向を向いていることがわかります。ブルース・トンネルはグーグルのストリート・マップには記載されておらず (トンネルが無いかのように地図が描かれている)、衛星写真にしてもかなり探しにくい状況になっています。それは、この区間で鉄道が丁度運河の上を通っており、鉄道と運河が重なってしまっている区間がトンネルの区間と一致しているためです。注意して探せばトンネルの出入口がわかります。

日々の操業では揚水所は電気モーターを使用し、運河の頂上区間の水位により自動的に制御されている。しかしながら、元々の蒸気エンジンによる揚水装置が保存され、いまだに動作可能である。一台の、ランカシャー・ボイラーが 1 台もしくは 2 台のビーム・エンジンに蒸気を供給している。

No 1. エンジン は 1812 年にボウルトン・ワットによって建造されて、 1840 年代にコーンウォール・エンジンに作り直され、単動作凝縮器エンジンで、内径が 42.25 インチ (1073 mm) で、ストロークが 7 フィート (2134 mm) で、表示馬力は 38.6 馬力 (28.8 kW) である。これは 30 インチ (762 mm) の揚水ポンプを駆動し、 1 ストロークあたり 2274 lb (1031 kg)、あるいはおよそ 1 トンの水を持ち上げることができ、 1 分で 11 ストロークである。

No 2. エンジン はヘイルのハーヴェイ社 (Harvey and Co.of Hayle) により建造され、 1903 年に作り直されたもので、単動作凝縮器エンジンで、内径が 42 インチ (1067 mm) で、 1 ストロークが 7 フィート 8 インチ (2337 mm) で、表示される出力は 42 馬力 (31 kW) である。これは 30 インチ (762 mm) のポンプを駆動し、 1 ストロークあたり、2235 ポンド (1014 kg) あるいはおよそ 1 トンの水を持ち上げることができ、 1 分間に 10.2 ストロークの率である。

揚水所の興味ある特徴に、グレート・ウェスタン鉄道がこの地帯に鉄道を建設した時、鉄道を揚水所の非常に近くに敷設し、揚水所と運河の間を通した。運河と揚水所の行き来には今や非常に低い天井のトンネルを利用する。

揚水所は 1810 年の運河の完成に間に合わせるように 1807 年から 1809 年にかけて建設された。揚水所は 2 台のポンプ駆動用のエンジンを収容するように建設されたが、最初に設置されたのは、1 台のみで、内径が 36 インチ (914 mm) のエンジンで、西インド・ドック会社 (West India Dock Company) から中古で購入した。

1810 年に、第二のエンジンをボウルトン・ワットに注文し、これが現在の No. 1 エンジンであるが、これは揚水所の蒸気動力の時代を通じて主エンジンであり続けた。

1846 年に、元々の 1809 年のエンジンをハーヴェイ社のエンジンで置き換えた。これは複動作の Sims の特許を組み込んだシリンダー・エンジンであった。しかし、このエンジンはトラブル続きで、まもなく使用されなくなった。

1903 年に、1846 年のエンジンを単純な単動作エンジンに作り変え、現在の No.2 エンジンとなった。どちらのエンジンも 1950 年代に至るまで、通常に使用され続けたが、煙突の状態が悪くなり、上部の 36 フィート (11 m) を除去しなければならなくなった。煙突の高さが低くなったため、ボイラーに充分な通気が得られなくなり、蒸気エンジンを退役させて、電気ポンプを設置する方が安くなった。

ケネット・エイボン・運河トラストは、1968 年に修復を考えて、揚水所を購入した。建物も 2 台のエンジンも修復され、修復できないボイラーは、同じ形式のものを中古で購入して、これで置き換えた。 No. 1 のエンジンは 1970 年の 4 月に始めて成功裏に蒸気を注入し、同じ年の 8 月 21 日にジョン・ベッジュマン (John Betjeman) により、揚水所が公式に再開された。 No. 2 のエンジンは 1971 年の 11 月に成功裏に蒸気を注入した。

最初は煙突が短い問題を、電気ファンを使用して通気を改善することで克服した。しかし 1996 年から 1997 年にかけて、煙突を修理して、元の高さの 82 フィート (25 m) に復元した。

2012 年に No. 1 のエンジン (ボウルトン・ワットのエンジン) は 200 回目の誕生日を祝い、季節を通じて祝賀の蒸気入れをし、これには 6 月 16 日、17 日のメイン・エベントがあり、グロスター公爵がエンジン・ハウスを訪れ、銘板の除幕式を行った。

揚水所は夏の間は毎日、開館しており、エンジンはこの期間の特別な日に蒸気を入れている。。「クロフトン・ビーム・エンジン」(Crofton Beam Engines) のウェッブ・サイトが入館の詳細を伝えている。。