コントゥークック鉄道橋 (Contoocook Railroad Bridge)

コントゥークック鉄道橋はかってのコントゥークック峡谷鉄道 (最初はコンコード・クレアモント鉄道 (Concord & Claremont)、後にボストン・メイン鉄道 (Boston & Maine)) の覆い橋で、米国ニューハンプシャー州コントゥークック村の中央でコントゥークック川 (Contoocook River) にかかっている。この橋は国の歴史登録財において、ニューハンプシャー州ホプキントン町 (Hopkinton) の ホプキントン鉄道覆い橋と言及されている。これはコントゥークック村があるニュー・ハンプシャー州ホプキントン町の理由からである。

橋は 19 世紀に建設され、米国で現存する最古の鉄道覆い橋で、 1960 年まで鉄道交通の任務に就いていた。橋は 1989 年まで倉庫として使用され、次に公的な資産となり、州・寄付・ボランティアにより、近くの歴史的停車場と関連して保存されている。

この橋は元々 1849 年 - 1850 年に建設され、 1889 年に大幅に再建され、より軽い鉄道橋の代わりになった。以前のコンコード・メイン鉄道 (Concord & Maine Railroad、1887 年にボストン・メイン鉄道 (Boston & Maine Railroad) が獲得) により建設され、橋は 4 基の現存する二重タウン格子鉄道橋 (double-web Town lattice) で最古のもので、米国で現存する最古の鉄道覆い橋である。 (他の「二重タウン格子鉄道橋」は 1907 年のニューハンプシャー州ニューポートのピアー橋、 1906 年のニューハンプシャー州ニューポートのライトの橋、 1908 年のバーモント州ウルコット (Wolcott) のフィッシャー橋 (Fisher Bridge) である)。橋は恐らくボストン・メイン鉄道の技術者ジョナサン・パーカー・スノー (Jonathan Parker Snow、1848 年 - 1933 年) によってデザインされ、大工のデイビッド・ヘイゼルトン (David Hazelton, 1832 年 - 1908 年) により建設された。スノーの下で、ボストン・メイン鉄道は、他のどの本線よりも長い複数の支線で木造の橋を使用し、この最後のものを 1916 年に建設している。近くのコントゥークック鉄道停車場は、より古いコンコード・クレアモント鉄道により 1850 年に建設された。

橋はこの形式としては、最も鮮明に、最も元々の構造を提示している。というのは他の橋は随分と構造の修正が組み込まれているからである。主トラスは二重タウン格子で、中央橋脚を越えて連続し、各々およそ 71 フィート (22 m) の 2 スパンを形成している。よく言われることだが、橋は大きく作り、切り詰められた (built by the mile and cut off by the yard)。中央の橋脚は川の流れにそぐうように、橋台と同様に斜めに作られている。これは橋が川に斜めにかかっているからである。

橋は 1962 年に至るまで鉄道橋として使用され、1936 年の洪水と、 1938 年のハリケーンを生き延び、その存続期間に 2 度基礎から引き離され、中を通り抜ける鉄のレールによって完全に押し流されることから救われた。鉄道の任務に引き続き、1962 年から 1990 年まで倉庫として使用された。

ニューハンプシャー州文化資源局・歴史資源局の配布する「昔の石の壁、2003 年秋」 (The Old Stone Wall, Fall 2003) に掲載された記事は次のように述べている。

重要な工事が州の所有するコントゥークック鉄道覆い橋で 8 月に始まった。「覆い橋保存国内協会」 (National Society for the Preservation of Covered Bridge) はニューイングランドの「納屋と橋」(Barns and Bridge) の経営者であるティム・アンドリュース (Tim Andrews) を採用して、橋の 4 隅の垂れ下がる角を持ち上げ、劣化した路床を交換させることになった。協会はイーストマン・トーマス基金 (Eastman Thomas Fund) からアンドリュースの建設経費を寄付している。橋は歴史資源局の行政保護下にあるが、歴史資源局は保守のための資本予算 (captal budget) を持っていない。過去何 10 年間を通して、国内協会は側面覆い (side sheathing) の修理、橋の平坦な金属屋根を寄付し、木造橋のための難燃剤を購入し、橋の保守に数知れないボランティア労働時間を提供した。現在の建設作戦のために、アンドリュースは彼の最近の仕事 ―― アンドーバー (Andover) のバッグ覆い橋での賞を獲得した復元 ―― から重い I-形鋼 (ニューハンプシャー州輸送局に貸与されたもの) を持ち込んだ。アンドリュースは橋が 1936 年の洪水と 1938 年のハリケーンで引き離された時に生じた幾つかのよじれも真っすぐにすることを望んでいる。コントゥークック橋はコンコード・クレアモント鉄道で生き延びた 3 基の覆い橋の 1 基である。他の 2 基は西ニューポートにあり、これも州により所有されているが、資源・経済開発局によるトレイル (trail、歩行路) の橋として管理されている。合わせると、 3 基残るコンコード・クレアモント支線の橋は世界中で生き延びた 8 基の鉄道覆い橋の中で最も見事なものである。 1989 年のコントゥークック橋は 8 基の中で、最古のもので、ニューポートのピアー橋 (1907 年) は最長で、ニューポートのライトの橋 (1906 年) は唯一の現存する二重タウン格子鉄道橋で、完全な木造積層厚板アーチ (laminated wood plank arches) がある。この希少性を認め、「歴史的な米国工学記録」 (HAER、Historic American Engineering Record) はコントゥークック橋とその姉妹橋ライトの橋を詳細な調査のために選択し、この夏に記録することになっている。橋は 1960 年に鉄道交通の任務を停止した後に、次々に個人的に所有された。橋は 1989 年にホプキントン町の所有物 (コントゥークックはホプキントンに属する村) となった。ホプキントンは橋を所有・保守することを望まなかったので、橋をニューハンプシャー州に提供した。ジャッド・グレッグ知事 (Judd Gregg) と執行委員会はその贈り物を 1990 年に受領した。州の法律により、歴史資源局 (DHR) が自治体から州に寄付された歴史的な覆い橋の管理責任を負っている。資本予算がないため、 DHR は橋の保守のための資金的援助を「覆い橋保存国内協会」に完全に依存している。 DHR は「コントゥークック・リバーウェイ協会」 (Contoocook Riverway Association) ―― これは近くのコントゥークック鉄道停車場 (1850 年) を所有している ―― とも手を組んでいる。協会と DHR は共同して橋と鉄道駅の復元のために、「輸送促進基金」 (Transportation Enhancement grant) を獲得した。橋の土台が確実に補強されれば、促進基金と保全ナンバープレート (ムース・プレート, [以下の訳注を参照]) の収入を合わせて、橋にスプリンクラーを設置し、本物のボストン・メイン鉄道のペンキで外壁を塗り、説明用標識 (interpretive signage) と内部の安全照明を設置することになる。

ジェームズ L. ガーヴィン (James L. Garvin), 州建築歴史家、2003 年 9 月

2006 年に、橋の上流側の北の角の (トラスの) 下部外周要素 (bottom chord) に少々構造的な修理が実施され、 1938 年以来始めて、受け台 (bolster) が交換され、床の材木が花崗岩の台 (pedestal) で置き換えられた。工事費は「覆い橋保存国内協会」の寄付により支払われた。

最近、橋のわずかな変更が実施され、 2009 年 - 2010 年の冬の中頃に完成した。これを構成したのは橋内部のドライ・スプリンクラーで、外部の消防署との接続があるもので、これに含まれるものは、線形熱感知器 (linear heat detectors)、火災報知器 (fire alarm system)、耐火コーティング (fire retardant coating)、橋内部の人感センサーによる LED 照明 (LED motion sensor lighting) から構成され、であった。ニュー・ハンプシャー州輸送局がおよそ $123,300 の経費を支払い、設計をした。

訳注

ドライ・スプリンクラーは原文では dry-head, open pipe sprinkler system と書かれています。この用語で英文ページを検索すると dry sprinkler (あるいは dry pipe sprinkler) が登場したので、ドライ・スプリンクラーの訳語を当てました。このスプリンクラーは、動作していない時には圧縮した気体がパイプに詰められ、気体が熱によって解放されると、水がパイプに進入し通常のスプリンクラーと同様に動作します。このような仕組みはスプリンクラー内部の水の凍結防止を目的にしています。
線形熱感知器というのはよく使用される火災報知機の種類で、初期状態でパイプの中に 2 本のケーブルがポリマーで絶縁されており、熱が加わるとポリマーが溶け、電線がショートして火災を知らせるものです。

2019 年 4 月に、橋を着色し、小さな修理を施す橋の工事が実施された。このプロジェクトは州のムース・プレート ("Moose Plate") の助成金プログラムにより資金繰りされた。町の 250 周年委員会、更にはコントゥークック・リバーウェイ協会 (Contoocook Riverway Association) のボランティアが時間と努力をささげて、プロジェクトを完成した。


ホプキントン鉄道覆い橋	位置	コントゥークック鉄道橋着色計画標識、2019 年 4 月


元々の鉄道覆い橋 (左) 道路覆い橋 (右)	HAER の外部写真, ジェット・ロウ (Jet Lowe) 撮影, 2003年	HAER の内部写真, ジェット・ロウ (Jet Lowe) 撮影, 2003年