ネプチューンズ・ステアケース (海王星の階段、Neptune's Staircase)

この階段水門の事を「ネプチューンの階段」と訳しているものもあります。

ネプチューンズ・ステアケース

(海王星の階段、Neptune's Staircase)

ネプチューンズ・ステアケースは階段水門で、カレドニア運河にある 8 層の水門から構成されている。これは 1803 年から 1822 年の間にトーマス・テルフォードにより建設され、英国で最長の階段水門である。このシステムは手作業で操作したが、水圧操作に転換されている。

ネプチューンズ・ステアケースはリニ湾 (Loch Linnhe) のすぐ北のフォート・ウィリアム (Fort William) の近くのバナビ (Banavie) にあり、「スコットランド運河」により保有されている。これは英国で最長の階段水門で、ボートを 64 フィート (20 m) 持ち上げる。これは 8 基の水門から構成され、各水門は 180×40 フィート (55×12 m) で、ボートが通過するのに、およそ 90 分かかる。

現在の水門ゲートは各々 22 トンの重さがあり、階段水門を操作するのに少なく共 3 人の水門管理人のチームが必要である。これは通常は「効率ベース」で操作される；すなわち各隔室を上昇ボート、下降ボートで満たすか、あるいは (互いに) 通過させる、すなわち、 (隔室の) 同じ満/空 - サイクルで、下降船舶が上昇船舶とすれ違う。

機械化以前には、水門はキャプスタン (capstan) で操作し、各キャプスタンには 4 本の棒が付き、ゲートを開閉するにはこの棒を 7 回完全回転する必要があった。階段水門には 36 個のキャプスタンがあり、階段水門をボートで完全に昇降するには (キャプスタンを) 126 回、回転する必要があった。水圧装置と押しボタンの到来により、階段水門の通過時間は半日から 90 分に削減された。

元々のキャプスタンの台座の基底はまだ見ることができる、もっともキャプスタン自身は取り除かれている。

カレドニア運河はトーマス・テルフォードが考えたもので、これは政府が高地 (Highland) からの移民により生じる方策を彼に尋ねたからである。彼が提案したことは、公共工事の建設は雇用を提供し、産業、漁業、農業を発展させる助けともなることであった。議会法が 1803 年 7 月に獲得され、工事を監督する委任委員会 (board of commissioners) が設置された。テルフォードが主任技術者に任命され、ウィリアム・ジェソップ (William Jessop) が助言技術者に任命された。 2 名の常駐技術者がいた； 1 名は、南側区間 -- ネプチューンズ・ステアケースを含む -- を分担し、ジョン・テルフォード (John Telford, 主任技術者と無関係) であった。

162×38 フィート (49×12 m) の水門を建設し、より小さな水門をそばに作って、これで 200 トンまでのボートを通すつもりであった。しかし 32 砲のフリゲート艦とバルト海でトレードする船の大きさを考えてから、主水門の大きさが 170×40 フィート (52×12 m) に増大され、小さな水門は省かれた。

プロジェクトの経費を削減するために、水門をまとめて配置することが決定され、そこでバナビが 8 基の水門の場所として選択された。フォース・クライド運河 (Forth and Clyde Canal) では、運河の低レベル横断はバスキュール橋で実施されたが、テルフォードとジェソップはこの運河では、この配置を拒絶した。というのは、マストが可動橋で損傷する危険が大きすぎると考えたからである。その結果、鋳鉄製の旋回橋が選択され、階段水門のふもとで、道路と鉄道のどちらも、この形式の橋を使用した。

水門を建設するための割栗石 (rubble-stone, 訳注を参照) を提供するために、石切り場がコーパック・モス (Corpach Moss) で開設された。 1809 年の 6 月までに、3 層の水門が完成し、階段水門は 1810 年に完成予定であったが、人手不足となり、もう 3 層が完成したのみであった。最後の 2 層は 1811 年末までに用意された。建設完了時に、階段水門は個々が 170 フィート (52 m) の水門ではなく、 180 フィート (55 m) であった。これ以外の運河の建設は長引き、1822 年 10 月にようやく完成した。水門を通過する交通は着実に増え、1824 年に蒸気ボートの乗客のために、水門の管理人の家を転換して宿が作られた。 3 隻の蒸気ボートがグラスゴーとインヴァネスの間で定期的に走り、往復に 6 日かかった。

訳注

rubble-stone は岩石を打ち割ってつくる小塊状の石材であるが、割栗石には大きさを指定してあるので、英語と日本語で意味が少し違うかもしれない。

幾つかの初期的な問題があり、運河は 1829 年 4 月に 2 週間閉鎖され、この間にバナビ多層水門の問題が修正された。ジェームズ・ロック (James Loch) は 1835 年に運河の報告を作成し、バナビの宿が小さすぎて、コーパックから遠すぎると断言した、もっとも前年にはこれを称賛していたが...。彼は石工事が実にひどいと述べて議論したことは、これを建設した請負業者はこれらが使用されることを想定しておらず、貧弱な技量をテルフォードから何とかして隠したことである。しかしながら、水門を見捨てる提案は回避された。水門の修理は 1880 年と 1910 年に必要になった：石造建築には深刻な欠陥があった。第一次世界大戦末までに、運河は深刻に資金的に困難となり、保守費用が収入をはるかに超え、 1920 年には運輸省はバナビ多層水門の修理のために £11,000 の助成金を与えた。運河は 9 週間閉鎖され、その間に工事が実施された。更に 1929 年に 3 ヵ月の停止があり、これは漂流船がバナビ多層水門の 2 つを破壊して、洪水を引き起こしたからである。

運河は 1962 年にブリティッシュ・ウォーターウェイズ委員会の世話に手渡された。水門を機械化するプログラムが開始し、すべての水門が 1969 年までに機械化された。船舶が水門ゲートに衝突したり、石造建築が崩壊する事故のあとで、運河を閉鎖する幾つかの呼びかけがあり、 1990 年代までに運河は危機状態になった。水門は膨れ、水漏れがあり、水門の再建とゲートの交換は £6000万と見積もられた。資金は利用可能でなく、技術者は別の計画を考案し、これは元の計画の 1/3 の費用しかかからなかった。 1995 年から 2005 年にかけての 10 回の冬の間に、運河の区間は排水され、水門の二重壁 (double-skinned walls) にドリルで穴をあけ、ステンレス鋼の棒を挿入して、壁を縫い合わせ、大量のしっくい (grout) が使用され、構造が密閉されて水密になった。新しい水門ゲートが装着され、コンクリートを使用する代わりに、必要な新しい石のブロックが修理のために切り出された。プロジェクトの終了までに、16,000 個の穴がドリルで開けられ、 25,000 トンのしっくい (grout) が使用された。最初に建設された時以来よりも、水門は恐らく良好な状態である。


階段水門を見上げる。	水門から、リニ湖と海からの入り口を見下ろす。