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Corliss steam engine - Wikipedia

コーリス蒸気エンジン (あるいはコーリス・エンジン) は蒸気エンジンで、 1849 年に特許を取った ロータリー・バルブ (rotary valve) と可変バルブ・タイミング (variable valve timing) を装着したもので、 ロードアイランド州 プロビデンスの米国技術者ジョージ・ヘンリー・コーリス (George Henry Corliss) により発明され、 そして彼にちなんで命名されたものである。

コーリス蒸気エンジン -- バルブ装置は
シリンダー・ブロックの右側で絵の左側

コーリス・バルブ装置を装着したエンジンは すべての固定蒸気エンジンで最良の熱効率を提供したが、20 世紀の ユニフロー蒸気エンジン (uniflow steam engine) の改良 と蒸気タービンが登場するまでの事であった。 コーリス・エンジンは 固定遮断する通常の蒸気エンジンよりも、 一般におよそ 30% ほど燃料効率が良かった。 この増大した効率により蒸気動力が水力よりももっと経済的となり、 産業革命をミル池 (millpond) から離すことが可能となった。

コーリス・エンジンは典型的には固定蒸気エンジンとして使用され、 工場とミル (factories and mills) における ライン・シャフトに機械的動力を提供したり、 発電をするために発電機を駆動した。 多くはとても大きく、何メートルもの高さがあり、 数百馬力を生成した、 もっともこれは低速で、巨大で何トンもの大きさのはずみ車を回転し、 1 分間におよそ 100 回転した。 これらのエンジンの幾つかは機械的なレガシー・システム (legacy、時代もののシステム) としての普通とは違う役目があり、 比較的効率が高く、保守の必要性が低いため、あるものは 21 世紀初頭まで 使用され続けている。 例えば、稼働エンジンの一覧の フック・ノートン醸造所 (Hook Norton Brewery) と蒸留酒製造所ディロン (Distillerie Dillon) のエンジンを参照せよ。

コーリス・エンジンはシリンダー毎に 4 つのバルブがあり、 蒸気バルブと排気バルブは両端にある。 コーリス・エンジンはバルブ自身とバルブ装置 -- すなわちバルブを操作するリンク機構 (linkage) のシステム -- の両方に独特な改良を組み込んでいる。

蒸気の吸引と排気に別々のバルブ使用することが意味することは、 シリンダー間のバルブや蒸気の通過で吸引と排気サイクルの最中に温度交換の必要がないことを意味し、 吸引バルブと排気バルブのタイミングを独自に制御できることを意味する。 対比すると、通常の蒸気エンジンのスライド・バルブ、あるいはピストン・バルブはシリンダーの両端で、 吸引と排気が交互に通過する。これらの通過はエンジンの運行中に温度の広い変動にさらされ、 バルブ機構の中に高い温度勾配がある。

クラーク (Clark, 1891 年) が論評することでは、 コーリス装置は 「以前に知られ別々に使用された要素を組み合わせたもので、 シリンダーとバルブ装置に影響したものである」。 コーリス装置の起源は、これ以前の蒸気バルブ装置に関わり、 イングリス (Inglis、1868 年) により追跡された。

ジョージ・コーリス (George Corliss) は 1849 年 3 月 10 日に彼のバルブ装置に関して、 米国特許 6,162 を受領した。 この特許はバルブの動きを単一の偏心器 (eccentric) から、 エンジンの 4 個のバルブに伝えるためのリスト・プレート (wrist-plate, 揺り板) の 使用を含み、 ガバナー制御の可変遮断 (variable cutoff) をするトリップ・バルブ (trip valve) の使用を 含んでいた。 後のエンジンでは大半が水平であるが、これとは違い、 特許では垂直 ビームエンジンを記述し、シリンダーの両端の吸引と排気の個別のスライド・バルブを使用した。

ゴードンの改良されたコーリス・バルブ装置の詳細な光景 リスト・プレート (wrist-plate) は中央の板で、ここから 4 つのバルブの各々に棒が放射している。

吸引バルブは偏心器が駆動するつめ (pawl) により開放し、 つめ (pawl) が外れる時に、急速な閉鎖は ダッシュポット (dashpot) を使用して減衰させる (damped)。 多くのエンジンでは、同じダッシュポット (dashpot) はバルブを閉鎖するための真空バネ (vacuum spring) として機能するが、 コーリス (Corliss) の初期のエンジンはとても遅く、バルブを閉鎖するのはダッシュポット (dashpot) のピストンと棒 (rod) の重さであった。

コーリス・エンジンの速度は各パワー・ストローク (power stroke) の最中に蒸気遮断を 変化させて制御し、一方スロットル (throtle) は常時、広く開けたままにする。 これを実現するために遠心力ガバナー (centrifugal governor) は一対のカム (cam) -- 吸引バルブ用 -- に接続されている。 これらのカムはピストン・ストロークの最中につめ (pawl) が開放される点を決定し、 バルブを閉鎖させる。

遮断を規制できるすべての蒸気エンジンと同様に、 これをする利点は、パワー・ストロークの大半では、 シリンダー内の蒸気の膨張により駆動される事実にあり、これは吸引バルブが閉鎖された後に起きる。 これにより、はるかに理想 カルノー・サイクル (Carnot cycle) に近くなるが、 これは、 吸引バルブがパワー・ストロークの間、開放し、 速度がスロットル・バルブにより規制されるエンジンと比較した場合の事である。

コーリス・バルブ装置により、もっと一様な速度が可能となり、 負荷の変動に良く呼応し、ローリング・ミル (rolling mill、圧延工場) と 紡績の応用に適したものとなり、製造における使用を随分と拡張した。

コーリス・バルブはシリンダー内に直接開放する。 複数のバルブがシリンダーに接続して、 蒸気空間と排気空間 (exhaust plenum) を分離する。 始め、コーリスは線形作動装置 (linear actuator) を持つスライド・バルブを使用したが、 1851 年までに、 米国特許 8253 に文書化されているように、 コーリスは半回転バルブ作動装置 (semi-rotary valve actuator) にシフトした。 このエンジンでは、リスト・プレート (wrist-plate, 揺り板) は後年のコーリス・エンジンと同様に、 シリンダーの側面の中央に移動した。 しかしながら、これはなお、ビーム・エンジン (beam engine) であり、 半回転バルブ作動装置は、エンジンの 4 つのバルブ室 (valve chests) の中の 線形スライド・バルブに作用した。

シリンダーの断面 回転バルブが見える	コーリス形式のバルブ装置とシリンダー 断面の詳細、高圧蒸気の通り道 (赤色) と低圧蒸気の通り道 (青色)、ストローク 毎に 4 つのバルブは開放と閉鎖を繰り返 し、ピストンを前後に駆動する。

コーリス・バルブは小さな円弧の形で、円筒形のバルブ表面 (valve-face) の内部で回転した。 これらの作動装置 (actuating mechanism) はバルブの軸から離れており、 従って、 ポペット・バルブ (Poppet valve) の軸のようなデッド・スペース (dead space) がほとんどなく、 蒸気口 (port area) の全体がガスの流れに効率的に使用できた。

コーリス・バルブの領域は蒸気口 (port area) と比較すると小さく、 ガスの流れの効果は他の種類のバルブと比較すると、 バルブの軸に比較的小さなトルクしか生成しない。 これらの利点から、コーリス形式のバルブは、 コーリス装置を持つ蒸気エンジンとは別に、他の用途にも使用されている。

ロールス・ロイス・マーリン航空エンジン (Rolls-Royce Merlin) は スロットルとして長方形のバタフライ・バルブ ( butterfly valve を使用していた。 ガスの流れの力が、このバタフライ・バルブに非対称に作用し、場合によっては動力のコントロールが貧弱になった。 134 以後の最近のモデルは、この問題を避けるために、コーリスのスロットル・バルブを使用した。

大きなコーリス・エンジンの共通な造作ははずみ車の縁の 1 セット、あるいは 2 セットの細い歯車の歯がある。 これらの歯により、はずみ車を バールの助けで回転できる。 これはエンジンの保守で、 例えば、バルブの遮断・吸引のタイミングを設定するのに必要なことがあり、 またエンジンの始動で必要なことがある。

エンジンの始動は バールを使用する必要は単一シリンダー・エンジンではほとんど明らかで、 不注意なエンジンの操作員がピストンを死点 (dead point) あるいはその近くで停止した場合である。 この状態で停止すれば、エンジンは自力で開始できないので、開始するためにもっと都合のよい位置に バールで移動しなければならない。

大きなコーリス・エンジンは安全にコールド・スタートすることができず、そのため普通にすることは、 低圧蒸気をシリンダーの両側に入れて、金属部品を温めた。 この工程の際に注意してゆっくりとエンジンを回転すれば、全エンジンが一様に暖かくなり、 動力を与える前に、オイルが一様にメカニズムの中に確実に分布される。 これをするために、再び バールが使用された。もっとも操作員は時々、注意深い手動操作でこれを実施した。

大きなエンジンでは、体力でバールを使用することは十分に困難となり、 しばしばバール・エンジン (barring engine) が設置される。 これらは小さなエンジンで歯車の切れ込みがはずみ車の歯車とかみ合った。 もしもバール歯車 (barring gear) がかみ合っている時に、エンジンが自身の動力で回転を始めれば、 一般にバール・エンジン (barring engine) の駆動歯車は自動的に切り離される。

コーリス蒸気エンジン会社 (Corliss Steam Engine Company) は 1830 年代に、 元々、フェアバンクス・クラーク社 (Fairbanks, Clarks & Co) と呼ばれた。 1843 年にエドワード・バンクロフト (Edward Bancroft) が会社に加わった時に、 フェアバンクス・バンクロフト社 (Fairbanks, Bancroft & Co) に改名された。 1846 年にジョージ H. コーリス (George H. Corliss) が会社に加わった時に、 会社はコーリス・ナイチンゲール社 (Corliss, Nightingale and Co.) に改名された。 1848 年に会社はロード・アイランド州プロビデンスのチャールズ・ストリートの レールロード・クロッシング (Railroad Crossing、鉄道踏切 (地名)) に移動した。

コーリスの競争相手によって開発されたエンジンに典型的な バルブ装置、ダッシュポットの水平配置とリスト・プレート がないため、コーリスの特許要求を回避した。。

1857 年に会社は最終的に 「コーリス蒸気エンジン会社」 (Corliss Steam Engine Company) に改名した。 1864 年にコーリスは共同事業者から株式を買収し、会社の唯一の所有者になった。 1900 年に 「コーリス蒸気エンジン会社」は 「インターナショナル・パワー会社」 (International Power Company) に買収された。 1905 年に、これは 「米国英国製造会社」 (American and British Manufacturing Company) に買収された。 1925 年に会社は 「フランクリン機械会社」 (Franklin Machine Company) と合併した。 この時までに 「フランクリン機械会社」 はすでに 「ウィリアム A ハリス蒸気エンジン会社」 (William A. Harris Steam Engine Company) に所有されていた。

1859 年までに、我々がコーリス・エンジンとして知っているすべてのキーとなる造作が取り付けられていた。 コーリス等に譲渡された特許ではロータリー・バルブとクランク・シャフトがシリンダーと共に一列に組み込まれていた。 例えば、1859 年 7 月 5 日に与えられたコーリスの米国特許 24,618 を参照せよ。 競合する発明家は コーリスのメカニズムの代替を発明するために 熱心に取り組んだ； 彼らは一般にコーリスのリスト・プレート (wrist plate) の使用を避け、蒸気バルブの代替の開放メカニズム (releasing mechanism) を採用した、 例えばジェーミソン (Jamieson) の米国特許 19,640 があり、 これは 1858 年 3 月 16 日に与えられた。

コーリスの 1849 年の特許は 1870 年に期限が切れた； この特許は何度か延長され、 1851 年 5 月 13 日の米国特許、再発行 200、 1859 年 7 月 12 日の米国特許、再発行 758, 763 によっていた。 「B. ヒック & サン」 (B. Hick and Son) はコーリス・エンジンを英国に導入した最初の企業であり、1864 年頃に実施した。 1870 年の後には、他の無数の会社がコーリス・エンジンの製造を始めた。 この中に含まれたのは： 「ウィリアム A. ハリス蒸気エンジン会社」 (the William A. Harris Steam Engine Company), 「ウォージントン・ポンプ・機械会社」 (the Worthington Pump and Machinery Company), 及び 「アリス-チャルマース」 (Allis-Chalmers) であった。

コーリス百周年エンジン (Corlis Centennial Engine) は 特別に建造された包括的な回転ビーム・エンジンである。 これは 1876 年のフィラデルフィアの 百周年万国博覧会 (Centennial Exposition) で展示された事実上すべての機械に 全長が 1 マイル以上のシャフトによって動力を与えた。 ユリシーズ・グラント大統領 (President Ulysses S. Grant) と ブラジル皇帝の ペドロ2世によりスイッチが入れられて、 このエンジンは博覧会の最中に公開されていた。

米国大統領ユリシーズ・グラントとブラジルのペドロ 2 世皇帝 がコーリス百周年エンジンを 1876 年フィラデルフィアの 百周年博覧会の開会式で開始した。

このエンジンは 2 つのシリンダーが横に並ぶように設計されていた。 各シリンダーは内腔が 44 インチ (112 cm) で 10 フィート (3.0 m) のストロークがあった。 百周年エンジンは 45 フィート (14 m) の高さで、はずみ車は直径 30 フィート (9.1 m) で、 1400 馬力 (1,000 kW) を生成した。 博覧会の後で分解されて、プロビデンスのコーリスの工場まで送り返された。 7 年後に売却されてジョージ・プルマン (George Pullman) が所有するシカゴ工場で 1910 年に至るまで動力を与え, この時、スクラップとして売却された。

このエンジンは文化的な偶像となり、非常にそうなったため、 多くの現在の歴史家にとり、コーリス・エンジン (あるいはコーリス蒸気エンジン) とはこの特別製のエンジンの事を言及し、コーリス・バルブ装置を装着した幅広いエンジンの事を言及するわけではない。